「あるものリスト」で枯渇恐怖に打ち勝つ

盗らないための工夫

ものをため込んでしまう理由の一つが、ものがなくなってしまうことに対する不安です。この不安を減らすには「あるものリスト」を作ることが有効だと思います。

よくあるのが「買うものリスト」

買い物に行くときに「買うものリスト」を作ることで万引きを予防しようとする人は多いと思います。店内のあちこちを歩くといろんなものが欲しくなってしまうので、何を買うかを予めリスト化し、店内を最短距離で巡ることで万引きを予防する作戦です。

買うものリストを作っても取り除かれない不安

買うものリストを手にしながら買い物をした時、こんな不安に襲われたことはありませんか?
「買うものリストには書いてないけど、買わなくて大丈夫かな?」
「あ、これ家にあったっけ?買わなくて平気かな?」

買い物リストに書き漏れがあるのではないかという不安です。家に何があるかがわからず、なくなることに対して不安になり、ものが欲しくなってしまう状況です。

クレプトマニアに見られるため込みマインド・枯渇恐怖

クレプトマニアに多く見られる心理状況に、「枯渇恐怖」と「ため込みマインド」があります。「枯渇恐怖」とは、お金や生活用品など物質的なものや自分自身の人間的な価値や評価などがなくなったり減ったりすることに異常なほどに恐怖を覚える状態です。物質的なものの場合、残っている量に関係なく、今あるものが減ることに恐怖を覚えます。どんなにたくさんあっても、「減る」ということが怖いのです。

枯渇恐怖によって引き起こされるのが「ため込み」です。ものがなくなることが怖いため、その不安を抑えるためにものをため込むようになります。生活消耗品や食品などの予備がないと不安になり、予備の予備を用意し、さらに予備の予備の予備を用意したくなるといった具合にエスカレートしていきます。

このような「ため込みをしたい」、「ため込みをしないと不安」という心理状態を「ため込みマインド」といいます。この枯渇恐怖・ため込みマインドはお金にも波及し、お金が減ることが怖いという状態になることがあります。「貯金があるから大丈夫」という問題ではなく、「減ることが怖い」のです。10あれば9になってしまうのが怖く、100あっても99になることに不安を覚えます。そのため、経済的に裕福であってもお金が減ることが怖くなります

このような状態になると、「お金を節約したい」という考えから、究極の節約である「盗み」をしたいという衝動に駆られることがあります。

ため込みマインドについてはこちらにも書いています。

「あるものリスト」で枯渇恐怖・ため込みマインドを抑える

買い物中に枯渇恐怖・ため込みマインドを増大させることは、窃盗欲求を高めることにつながる可能性があります。盗らずに買えればいいのですが、リスクを減らすという意味では枯渇恐怖・ため込みマインドを増大させないに越したことはありません。

そこでおすすめなのが、「あるものリスト」です。「買い物リスト」は、言い換えれば「ないものリスト」です。リストを見て「ないから買おう」となるわけですが、書き忘れたという不安に駆られることもあります。何がないかを考えることにもなるので枯渇恐怖が大きくなってしまう可能性もあります。

枯渇恐怖やため込みマインドを抑えるために大切な感覚は「あるから買わなくて平気」、「あるから盗らなくて大丈夫」という、安心感だと思います。この「すでにものがある」という安心感を得るために作るのが「あるものリスト」です。

生活消耗品や食料品など、家にあるものを予めリストにして、買い物の時に持参することをお勧めします。

例えば、スーパーで買い物中に安く売っている洗剤が目に入ったとします。買うものリストには書いていませんが、書き漏れているのかもしれないという思いが頭に浮かびます。また、家に予備がどれだけあるかがわからないので、欲しくなる衝動にかられることが考えられる場面です。そんな時にあるものリストを見れば、家に予備があるかどうかがわかります。すでの予備があるとわかれば、安心して洗剤の横を通り過ぎることができます。

「あるものリスト」を作るのは意外と簡単

わたしは食品のため込み癖があります。枯渇恐怖・ため込みマインドは摂食障害の人に多く見られると言われていますが、その典型です。ため込みをゼロにするのは難しいですが、ほどほどにするためにスマホに「あるものリスト」を作っています。

買い物中、ため込みがちな食べ物が安く売っていたりすると欲しくなります。しかも、大量に欲しくなったり、あるものすべてを買い占めたいと思うことも多いです。そんな時はあるものリストを見て、「これはあるから買わなくて大丈夫」・「すでにいくつかあるから○個だけ買おう」などと気持ちを落ち着かせるようにしています。

「あるものリストを作るのは大変」と思うかもしれませんが、実際にやってみるとそうでもないです。というのも、ため込みたい気持ちにスイッチが入るものはある程度決まっているからです。人には説明できないマイルールに基づいたため込みですが、気になるものさえリストアップできれば大分効果的なあるものリストが作れると思います。

もっと簡単にしたければ、ため込んでいるものをスマホで撮影するだけでもいいと思います。冷蔵庫の中身をパシャ、洗剤類の棚をパシャ、そんな感じです。その写真を見て、「これだけあるから大丈夫」と気持ちを落ち着かせることができます。

一度やめてみたら、ため込みがひどくなった

「あるものリスト」は毎日のように万引きをしているときからつけていました。少しでも盗る量を少なくしないとまずいという意識があったので、あるものリストを見て「もう盗らなくて大丈夫」と、窃盗欲求を抑えようとしていました。そして、万引きをしないようになってからもしばらくは継続していたのですが、以前よりも枯渇恐怖・ため込みマインドが少なくなっている気がしたので、あるものリストを作るのをやめてみました。

すると、あっという間にため込み(買い込み)がひどくなりました。むしろ、盗っていた時はため込んでいなくても「明日盗ればいいや」くらいに思っていたのが、ちゃんと買うようになって「こんなに安く売る機会はもうないかもしれない。安く売っている今のうちに買い込みたい!」と思うようになり、ため込みが増えてしまいました。

そのため、今は再び「あるものリスト」を作り、ため込みすぎないように注意しながらちゃんと買っています

いずれはあるものリストがなくても普通に買い物ができるようになりたいと思いますが、今はその段階ではないようです。枯渇恐怖・ため込みマインドとうまく付き合って盗らない生活を送るためにも、しばらくは「あるものリスト」を続けようと思っています。

関連する項目はこちらです。