2025年4月、多くの方の支えのおかげで脱万引き6年を迎えることができました。この1年を振り返ってみたいと思います(2025年4月22日)
リスクの高い生活を選択
2023年12月に理学療法士として勤務していた会社が突然倒産し、失業しました。それを機に当事者活動を中心にして生活できるように頑張ろうと決意、この1年は当事者活動を中心に行動し続けた1年でした。経済的には不安定で、貯金を切り崩していく生活になりました。お金が減ることに不安を覚え、その解消方法としての万引きの味を知っているわたしにとってはリスクの高い生活です。それでも盗りたい気持ちが湧くことも、窃盗をすることもなく1年を過ごすことができました。窃盗に依存する大きな誘因となった「満たされない感覚」が、大きく減っているからだと思います。「少しでもお金を減らしたくない」と先行き不安におびえまくっていたわたしが、「なんとかなるだろう」と思えるようになってきました。なんとかなるというか、何とかすればいいんです。
というのも、ある方に「今後今の形で活動を続けていくのは、やっぱりいろいろと不安」ということをお話したら、「悠さんがやることは、全部正解だよ」と言ってくださいました。そっか、正解かどうかを考えて選ぶのではなくて、選んだものをその後に正解と思えるようにしていけばよいのだなと。そして、失敗したとしてもそれを糧にできれば後に正解だったと思えるようにはできるなとも思いました。一人ではどうしようもないことでも、助けを求めれば何とかなる、そう思えるようになりました。以前よりもずっと、良い意味で人に依存することができるようになってきたと思います。
応援してくれる人たちの存在
今は対外的な活動が増えてきたこともあり、いろんな人が応援してくれていることを肌で感じることができます。これが本当にありがたいです。わたしがやってきたことは犯罪行為・加害行為あり、批判されて当然です。そんな中で応援していただけることは本当に力になります。
先日、ネット記事が配信された時にはそれを見つけた大学の友人(カミングアウト済み)が連絡をくれました。そのネット記事にはそれなりの数のコメントがつき、批判的な声も多かったのですが、そんな中で「顔を出さずに批判している人もいるけど、ちゃんと悠のことを知っていて応援している人もいるから忘れないでね」と伝えてくれたことはとても心強かったです。クレプトマニアの当事者活動を通じて知り合った方の存在ももちろん大きいのですが、旧知の友人たちの存在はまた格別です。
感謝の気持ちが自然に持てるようになった
今はいろんな人に支えてもらいながら生きています。前より支えてもらっているという部分もありますが、実際には支えてもらっているのにその存在に気が付かなかった、上手く頼れなかったという部分が大きいと感じています。そして頼ってしまうと「迷惑かけてごめんなさい」と、相手の顔色を伺うような感情が先に来ていました。とにかく相手の反応が気になってしまうので、想像でしかない相手の感情を伺い、先手を打って謝罪しておく、そんな感じでした。でも最近は、自分の感情である「感謝の気持ち」が先にくるようになりました。他者の言動を気にしすぎてしまう「他人軸」から、自分の気持ちを優先できる「自分軸」にシフトしてきているからだと思います。”世間の目”と思っていること、それは実際には自分自身の内在化された物差しであり思い込み・決めつけであることがほとんどです。どう見られているかなんて、実際にはわかりません。そんな他者評価を過剰に気にしすぎるのではなく、まずは自分自身が感じている気持ちを大事にする、そういったことができるようになってきました。もちろん迷惑をかけていることもたくさんあるとは思いますが、以前よりも人に頼ることができるようになったのは、「感謝の気持ちが自然に湧くことが心地よい」からなのではないかなと。今後もいろんな人に助けていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
過去の感情の蓋が開く
この1年は比較的時間に余裕があったので、自分自身の過去を振り返ることに多く時間を割きました。そのことで過去の置いてきぼりになった自分の感情がちょこちょこと顔を出してくることが多かったです。自分自身の生きづらさの3大要因である「機能不全家族・Xジェンダー・最初の職場でのハラスメント」についても、自分の中に押し込めていた小さなトラウマ的エピソードが思い出されることが多くありました。それらの感情は成敗しようと無理に押し込むのではなく、語ること・きちんと向き合うことによって成仏させることが大事だということもわかるようになったので、「あの時はしんどかったよな…」と自分自身に語り掛けるように感情を受け止めています。決して楽な作業ではないですが、今はそういうことができる段階に至れたように感じます。一人で抱えきれないときは、他者に聞いてもらったりしながら、少しずつではありますが確実に成仏できた感情が増えてきています。
「自分を大切にする」
依存症からの回復には自分を大切にすることが大事だと思い、2023年元日から毎朝SNSに「今日も、自分を大切に!」と投稿してきました。すると、それを見たNHKの番組ディレクターの方から、「一緒に考えてみませんか?」とお声掛けいただき、「toi-toi」という番組に「自分を大切にするってどういうこと?」という問い立て役として出演させていただきました。継続しているとこんなことがおこるんだなーとびっくりです。
ロケや収録で、自分一人ではできないようないろいろな体験をさせていただきました。また、万引きをやめてから継続している同居の両親と3人で話をする「家族会」の様子を撮影していただくことで、その意味やありがたさを改めて感じることができました。いろんな人の話が印象に残っていますが、中でも「過去の自分を含めて大切にする」ということばが強く印象に残りました。良くも悪くも今の自分があるのは、過去の自分があるからです。今後、盗らない生活を続けていくためにも過去の自分を大切にしてあげることもとても大事なんだと、気づかされました。もちろん眼をそむけたくなる部分もありますが、いつまでも否定していても仕方ないです。どうせなら活用しよう、そんなことを改めて思いました。
ネクタイ締めて結婚式へ!
「自分を大切にする」、これができたと思えたのは友人の結婚式に参列した時のことです。いつもとてもお世話になっている友人、ゲイカップルの結婚式に参列させていただきました。多くのセクシャルマイノリティ・アライ(Ally、性的マイノリティの人々を理解し、支援する人)が集まった席だったので、すごく気が楽でした。
その要因として自分の中で大きかったのが、着たい服を着て参列できたことです。今まで結婚式は、それに参列すること自体は全然嫌ではないのですが、女性的にしなきゃという思いで服装を選ぶのが苦痛でした。フォーマルな場、親族の方もいるし、それなりにしなきゃなという思いがあり、さすがにスカート(ドレス)は無理でも、パンツにジャケット(腰の部分がきゅっと絞ってあるレディースっぽいやつ)、ヒールを履いて、乗り気じゃないけど最低限の化粧もするくらいはやっていました。ジェンダーロールにしばられた、周囲の目を気にする自分が捨てきれませんでした。そして、ジャケットにネクタイ姿で参列する男性陣を見ながら、わたしもそういう格好がしたいなと思っていました。
でも、今回はネクタイ締めました。靴もぺったんこです。普段の通り、化粧なんてしません、できませんので。それが全然不自然にならない会場の雰囲気が、本当によかったです。お二人の幸せそうな姿も含め、忘れられない1日となりました。
買い物を気にしないことが増えた
クレプトマニア関連のことで言うと、仕事帰りなどふとした時にお店に寄らないという選択をすることが増えました。以前は相当疲れていても、買いたいものがなくてもお店に寄っていました。「安いものがあれば買っておきたいし、値段が知りたい。お買い得なものを買いそびれるのは損だから、とりあえず見ておきたい」、そんな思いがいつもあり、ヘロヘロになりながらもお店に行かずにはいられないという感じでした。窃盗衝動はないのですが、節約依存から離れられないという状態でした。でも最近は「疲れているし、もういいや」、「帰ってやることがあるから、早く帰ろう」など、お店に行かないという選択が増え、節約ファーストではなくなったように思います。とにかくコスパ、お金を節約することが最優先で行動を決めていましたが、今は時間や自分の気持ち・体調など、他の事柄も含めて行動を選べるようになりました。物価上昇ももちろん気になるので、休みの日など時間があるときにお店をはしごすることもありますが、そればかりに囚われるということはだいぶ減ったと思います。買い物(節約、安いものを買うための行動)の優先順位を下げることができるようになりました。
違う局面になった感じがする
5年を超えて、6年目に突入したことで何かひとつ局面が変わったと感じています。窃盗の問題がひと段落して、生きづらさの根っこの問題に向き合うことに注力できるようになった感覚があります。3年目の時も同じようなことを思いましたが、その段階ともまた違います。「万引きをしない理由がある、だから盗らない」から「万引きをする理由がない、選択肢にない」といった感じになり、必然的に盗らない生活になっています。
根っこの問題から目を背けていても前に進めないということは以前から感じていましたが、ついつい他のことを優先してしまうことも多かったです。でもそれは逃げ回るための言い訳で、向き合う勇気が持てなかっただけなのかもしれません。今は「前に進みたいから時間をかけよう」と思えるようになりました。すると、ちょいちょい感情の蓋が開きます。以前も開くことがあったのかもしれませんが、そこを受け止められるようになってきました。
数字の3・5は何かと区切りに捉えることが多く、意識しているわけではありませんがやはりそんな印象を受けます。局面が変わったということで、その局面ではまだまだひよっこです。課題はたくさんあります、つまり伸びしろがたくさんです。やっぱりまだまだ回復なんてしていないし、もっとよくなれるはず。慌てず、焦らず、諦めずにこつこつとやっていきたいと思います。
節目に書いている文章はこちらです。








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