行動が変われば心が変わる

万引きを手放すために,思うことあれこれ

「心が変われば行動が変わる」という言葉がありますが、今回はその逆「行動が変われば心が変わる」という体験をご紹介します。

有名な言葉

次の言葉は巨人やヤンキースなどで活躍した松井秀喜選手が、高校時代の恩師から教えてもらったものとして有名です。

心が変われば 行動が変わる
行動が変われば 習慣が変わる
習慣が変われば 人格が変わる
人格が変われば 運命が変わる
運命が変われば 人生が変わる

「もともとはウィリアム・ジェームズというアメリカの心理学者のことば」とか、「ヒンドゥー今日の教えである」などいろいろな説があり、さらに付け加わったりしているようです。つまりは、「心が変われば人生までもが変わるよ」という言葉です。

心の変化はわかりにくい

ここで書かれている始めの一歩は「心を変える」ということ、とても大事だと思います。でも、心を変えるって難しいです。その難しさの原因の一つに「心の変化はわかりにくい」ということがあるのではないでしょうか。

外来治療では万引きをやめられなかった

わたしは自分がクレプトマニアだと認識し、自分一人ではどうしようもできないと思ったので医療機関を受診し、通院治療を始めました。そのタイミングでクレプトマニアの自助グループにも通い始めました。でも、結果的に通院と自助グループだけでは万引きを止めることはできませんでした。

通院と自助グループへの参加を始めたことで「万引きをやめなきゃまずい」と思えるようになったので、全く効果がなかったとは思ってはいません。心は変化していたと思います。でもその変化量は少なく、行動の変化に至るまでのものではありませんでした。また、行動の変化がないことで心の変化が起こっているかどうかにも懐疑的になっていました。

入院をして、半強制的に行動を変えた

外来通院と自助グループへの参加だけでは万引きを止められずにいましたが、3か月の入院治療を経て、今は盗らない一日を積み重ねることができるようになりました。

通院期間と入院期間で一番違ったことは、万引きをしなかったということです。正確に言えば、入院したことで万引きできない環境になったということです。万引きができる環境では止めることができませんでした。「万引きがやめられないことに悩んで」いましたが、正確に言うと「やめたいと思えないことに悩んで」いました。でも何とかしないとマズいと思い、盗れない環境に行くことを決意し入院しました。万引きができない環境になったことで、自分の意志とは無関係に行動が変わりました

「万引きをやめたい」、そう心が変わるまで待っていたら、行動はもっと先になっていたと思います。依存期間が長くなれば手放すのも大変になります。逮捕歴も増えていた可能性が高いです。心の変化を待たず具体的に行動したこと、これはとてもよかったと思います。

わたしの場合、「行動を変えて、心が変わった」

入院をすることで万引きをしなくなりました。万引きをしなくなったら、心が変わりました

心の変化で一番強く感じたことは、後ろめたさが減って心が楽になったということです。入院前、万引きをする毎日を過ごしていた頃は、その後ろめたさからいつもびくびくしていました。心がざわついていて、いつも穏やかではありませんでした。それが、万引きをしなくなったことでビクビクと怯えるような感覚がなくなり、心が楽になりました。

また万引きをやめたことで、やめた方が楽なんだということがわかりました。盗っていた頃は万引きをすることで達成感や満足感を得ていたこともあり、万引きを手放すことに不安がありました。経済的な得もしていたので、万引きをやめたいと思えていませんでした。でも実際に万引きしない生活をしてみたら、そちらの方が楽ということが分かったんです。その結果、「(自分は望んでないが)万引きはやめなきゃいけない」という考え(心)から、「万引きをやめよう」・「万引きをやめたい」と思えるようになりました

万引きを「やめたい」と思えないことに悩んでいるという状態から脱することができました。

「隠す」という行動を変えた

入院前は毎日のように万引きをしているということを隠して生活していましたが、入院時にすべて正直に話しました。「隠す」ということをやめ、なるべく正直に話すことを心がけました。すると心が楽になりました。「隠すより、話したほうが楽だし、なるべく正直でありたい!」と思えるようになり、心が変わった実感がありました。行動を変えたら、心が変わったのです。こうなるとプラスのループが始まります。行動が変わって心が変わる、さらに心が変わったから行動も変わる、こんな感じです。

行動から変えるのは変化がわかりやすい

行動を変えるのは意識的にできます。そのため、とても分かりやすいし取り組みやすいです。さらに、周囲から見ても変化がわかりやすいのでほめてもらいやすいです。先に行動を変えると心の変化が起こることを期待するため、心の変化を感じ取りやすくなります。その結果、ちょっとした心の変化にも気がつくことができ、モチベーションを維持しやすくなると思います。

「どうなるかわからないけど、とりあえずやってみよう」くらいの気持ちで、行動を変えること・具体的な行動をとることが大きな変化につながるのではないかと感じています。

自分から「変えていく」気持ちで!

依存症から回復し続けること、窃盗をしない生活を続けることは簡単ではありません。特に、窃盗行為を手放すという第一歩を踏み出すことは、とても大変です。行動が「変わる」のを待つという、受け身の気持ちでいるうちは、窃盗を手放すことは難しいと思います。

行動が「変わる」のを待つのではなく、自ら行動を「変えていく」という気概を持って変化を起こしていくことが、回復へつながる行動になるのではないでしょうか。

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