書籍紹介『クレプトマニア・万引き嗜癖からの回復』

2020年10月22日

この本の著者はアメリカ人弁護士で、クレプトマニア当事者でもあります。サブタイトルが「”ただで失敬”してしまう人たちの理解と再犯防止エクササイズ」となっており、ワークシート形式の演習も掲載されています。

著者・監訳者の紹介

この本の著者であるテレンス・ダリル・シュルマンさんは、ミシガン州在住の弁護士でクレプトマニア当事者です。1992年にデトロイトでC.A.S.A(Cleptomaniacs And Shoplifters Anonymous.:無名の病的窃盗者たち )というサポートグループを立ち上げています。現在は窃盗嗜癖とその回復についてのウェブサイト(www.kleptomaniacsAnonymous.com)の運営などを行っています。

監訳者はひろメンタルクリニック(石川県)の院長で、医師・精神保健指定医の奥田宏さんです。

本の構成(目次)

第Ⅰ部 それぞれの物語
第Ⅱ部 考慮すべきこと
第Ⅲ部 演習
 ①自己探求のための質問
 ②不公正なことについてのわたしのリスト
 ③幸運に感謝するわたしのリスト
 ④店を避ける方法のリスト
 ⑤日記をつけること
 ⑥自分でグレーゾーン行動のリストを作ろう
 ⑦無料景品やお得な商品を得る健全な方法
 ⑧よくみられる引き金とそれに対する対処法
 ⑨よくみられる警告徴候と対処方法
 ⑩自分の嗜癖が自分にどのように働き、作用していたのか
 ⑪12ステップと万引き嗜癖からの回復
 ⑫AAの12ステップ
 ⑬生活上のハプニング:質問
第Ⅳ部 関連する話題

本の内容

この本は4部構成になっています。

第Ⅰ部は著者を含む4名の体験談が掲載されています。特に、著者である「テリーの物語」は幼少期から回復し続けている現在の状況までが詳細に書かれています。さらに「考察」・「回復へのステップ」・「再発の危険なサイン」がまとめられています。

第Ⅱ部は万引きを始めた理由や統計データ、回復中の課題など、クレプトマニアに関する情報について書かれています。万引きを繰り返す人の特徴や分類についてもわかりやすく記載されています。

第Ⅲ部は万引きをやめるための演習がワークシート形式で掲載されており、AAの12ステップについても著者の経験に基づいた解説と合わせて紹介されています。

第Ⅳ部では店舗経営者側の体験談や、家族・関係者の当事者に対する介入方法や自助グループの立ち上げ方などが紹介されています。

本の帯には「万引き依存であった著者が、自らの経験を踏まえて語る病的窃盗の実際。回復のための具体的支援を示したリカバリー実践書。」と書かれています。アメリカで実践された方法を紹介する内容であり、回復に向けて具体的な取り組みが掲載されています。

わたしが読んで感じたこと

この本は著者本人がクレプトマニアであり、自助グループの立ち上げや電話相談を行うなど多くのクレプトマニアやその関係者との経験に基づいて書かれています。当事者ならではのリアルな表現で、共感する部分が多くあります。万引きをしないための具体的な対策や考え方のヒントについても触れられており、「盗った商品はどうするか?」、「グレーゾーンについてどう考えるか?」というような、クレプトマニアの仲間たちともよく話題に上がることについても書かれています。命令口調ではなく「~したほうがよい」、「~すべきだ」という表現になっているものが多く、回復に向けての提案・アドバイスと捉えるのが良いのではと感じました。

ワークシート形式の演習は、内容に沿って作業を進めていくことで、自分の過去を振り返ったり、盗らないための具体的な対策を考えることができます。 「万引きを手放したいけど何をしたらいいの?」 、「どうやって棚おろし(今までの不正行為を正直に振り返ること)を進めたらよいかわからない」、という方にはかなり有効だと思います。

またAAの12ステップについて、著者の実体験に基づいた解説が載っています。12ステップは多くの依存症の自助グループで用いられていますが、クレプトマニアからの目線で解説されているものは少なくとても参考になりました。

「道のりは険しい。社会の目は厳しい。だが、クレプトマニアからの回復は、あなたにも可能だ。」という著者からの力強いメッセージも記されています。ちょっと癖のある文章ではありますが、クレプトマニアからの回復方法を具体的にイメージしたい方にはぴったりの本だと思います。

書籍情報

著者:テレンス・ダリル・シュルマン 監訳:奥田 宏
出版社:星和書店 発行日:2019年7月 定価:\2,500+税

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