日記のススメ

万引きを手放すために

自分のこころと向き合い気持ちを外に出すことのトレーニングにもなるので、日記をつけることをお勧めします。

1日を振り返り、気持ちを吐き出す

日記をつけること、ことばとして文字に書き出すことで、気持ちの言語化・外在化ができます。負の感情など、嫌な思いをため込んでしまうと大きなストレスとなり、それを発散するために依存行為に頼るという展開に陥りがちです。そうならないためにも、こまめに外に出すことが大切になります。

「負の感情がたまったら書いて発散しよう」、それだと手遅れになりがちです。クレプトマニアには、そもそも自分の感情などのストレスを感じ取るのが苦手な人が多く、ストレスがたまっていると自覚した時には手遅れになっていることも多いです。日記をつけるとなると、書くネタを探すために、定期的にその日の出来事を意識的に振り返ることができます。その結果、早い段階で言語化・外在化することで、ストレスの芽を早めに摘むことができる可能性が高まります。最初はうまく感情をことばにできなくても、繰り返しトレーニングすることで徐々に書けるようになっていくと思います。わたしは思いを文字にすることで頭が整理される感じがするので、この作業にとても効果を感じています。

言語化・外在化についてはこちらに詳しく書いています。

文字にすることのメリット

日記を定期的に文字に残すことのメリットは、記録として後に残り読み返すことができるという点です。どんなに記憶力が良くても時間が経てば忘れます。感情が変化するため思い出すことが難しくなることもあります。日記として記録に残しておけば後になって読みを返すことができ、現状との比較がしやすくなります。その結果、変化の有無が分かりやすいです。文字として記録しておくと、日々の生活の中ではなかなか感じられないような小さな変化でも、積み重ねることで大きな変化につながっていることを感じられたりもします。そのためモチベーションを保つための道具としても使いやすいです。

また、手書きでノートに書いておくと、字が乱れたり、筆圧が変化したりと、文字情報以外にも伝わってくることもあると思います。感情の変化がわかりやすい形で残ります。絵が得意な人はちょっとしたイラストなんかを書き込むのもいいですよね。

コツコツ続けるトレーニングになる

依存症になると、依存行為で即時的な効果を得ることを覚えてしまうため「すぐにわかりやすい効果が出ないことをコツコツ継続するのが苦手」になってしまいがちです。それを克服するためのトレーニングとしても日記はぴったりだと思います。

ある人は、「日記は種まき」と言っていました。すぐに花は咲きません。そのため、最初はちょっと面倒かもしれません。でも、一度花が咲く(時間が経ってから読み返す)と、種まきが面倒ではなくなります。花をイメージして、種まきが楽しくなります。楽しくなるとまでは行かなくても、意味を見出すことができると思います。部屋を片付けていて、過去の手紙や写真などを見つけると思わず読みふけってしまう、そんなことを自分で作りだす感じで楽しいです。コツコツと続ければ、後になって花が咲く。そういう成功体験を積むことができます

出来事だけでなく、心境を意識的に書く

その日にあった出来事だけでなく、心境・感情についても書くことをお勧めします。これは感情をことばとして出すトレーニングになり、ストレスケアに役立つということももちろんですが、文字にして残しておくことで振り返りやすくなるからです。内面の記憶は曖昧になりがちです。また変化がわかりにくいものです。それを文字にして残しておくことで、とてもよい振り返りツールになります。感情面のことが書いてあると、振り返って読んだ時によりおもしろさが増す印象があります。

無理せず続けることが大事

継続的につけることが望ましいですが、あまりルール化しすぎるのも良くないと思います。 あまり書くことがない時でも感情と向き合ってなるべく文字にするというのはいいトレーニングではありますが、度が過ぎると書くことが苦痛になってしまいます。そしてプイっとやめてしまう。程々が苦手な人が多い依存症者とって、これが長く続かない典型的なパターンです。気が乗った日にはたくさん書く、スキップしてしまってもあまり気にせず書ける時に書く、書くのに気が乗らない日は気が乗らないということを正直に書く、そのくらいの緩さの方が上手くいきます。自分なりの方法で良いので細く長く続けることが大事だと思います。

小さい頃から日記をつけていた

わたしは小学生の頃から、日記をつけていました。というのは、父が毎日返事を書いてくれていたからです。いつが始まりだったかはっきりとは覚えていないのですが、たしか文房具のお楽しみ袋に日記帳が入っていたことがきっかけだったと思います。姉もわたしも小学校低学年の頃から日記を書き、それに父が返事を書いてくれるというのが親子の日常でした。父は仕事で帰宅が遅く、平日は夕飯も一緒に食べることはありませんでしたが、日記の返事はきちんと書いてくれていました。むしろ、わたしは本当にいい加減でため込んでは2~3行の日記を書くというようなありさまでしたが、父は倍以上の返事を書いてくれました。そのためやめるにやめられず、続けていました。返事を書いてもらえることがなかったら、すぐにやめていたと思います。

中学に入るころにはそれも終わりになりましたが、あるときその日記を読み返す機会がありそれがとても楽しかったのです。「日記は後になって楽しめる」という経験をしたことが、のちにまた日記をつけるようになる大きな要因になっていると思います。そんな経験を作ってくれた父には本当に感謝しています。

万引きがやめられなかった頃も書いていた

今は10年日記をつけています。スマホのアプリで付けていますが、2020年3月1日と2021年の3月1日が同じページに並ぶというようなレイアウトで、同じ日に何をやっていたかがとてもよくわかります。これを10年分貯めることができます。スマホなので撮った写真もアップすることができ非常に便利です。また、電車に乗っているときやちょっとした空き時間にもつけられるのもよいですね。

今つけている10年日記はクレプトマニアになる前、万引きがやめられない真っ最中、入院生活、万引きを手放した後、それらの期間が含まれています。万引きしたことは隠語で書いてあるのですが、どのお店で万引きをしたのかが大体わかります。盗っていた頃の後半には、盗んだ商品のおおよその金額も記録していました。わたしは万引きがやめられてから、思い返せる被害店舗すべてに弁済をしたのですが、この記録が大いに役立ちました。一方で、その頃の感情についてはほとんど書いてありません。いくらスマホでアプリ自体にもロックが付いており誰かに見られる可能性は低いとはいえ、誰かに見られてバレるのではないか、後に証拠として押収されるかもしれない、そのようなことに怯えていたからです。また、普段から自分の感情を大切にしていなかったことも影響していると思います。盗らない生活が送れるようになり、意識的に感情面についても書くようにすることで、少しずつ感情を出せるようになってきました。これも読み返してみて分かる変化です。

季節の影響を受けていることに気が付いた

10年日記を書き、過去の日記を読み返すと段々と傾向が見えてきます。同じ日付の日記が見やすい(紙の日記だと見開きになっていることが多い)ので、同じ時期にどのような状況だったかが振り返りやすいです。すると、わたしは季節の変わり目にメンタルの調子を崩しやすいことが見えてきました。そのことで、事前に対策を立てることもできます。そして調子が悪くなっても「これは例年パターン、季節変わりだから仕方ない」と受け入れることで上手く対応できるようになってきました。これも日記を書いて、心境の変化をわかりやすい形で残しておいたからできたことだと思います。

この投稿は2023年12月末に書いていますが、10年日記が残りわずかだということに気が付きました。クレプトマニアになる前から、万引きに依存していた頃、そして万引きを手放した後のことが書かれています。決して忘れてはいけない10年間の記録です。大切に保管し、読み返すことで、贖罪の気持ちを忘れないようにしていきたいと思います。

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