行動を変える、それができるのは本人のみ

万引きを手放すために

周りはきっかけを与えることはできても、それ以上はできません。行動を変えられるは本人のみです。

変化は不安が伴う

アノニマスグループのミーティングなどで唱和されることが多いのが「平安の祈り」です。

神さま
わたしにお与えください

自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものを変えていく勇気を

そしてこの2つを見分ける賢さを

ラインホルド・ニーバー

「過去と他人」は変えられないもの、変えられない過去と他人には囚われない。変えられるのは自分。そして、変えるのには勇気が必要、そいうことだと捉えています。

人のこころには現状維持バイアスがあるとされています。現状維持バイアスとは現在おかれた状況からの変化を嫌い、現状を維持したくなってしまう心理現象のことです。これがあるため、自分から変化を起こすというのは怖いもので、とても勇気が必要であり、なるべく変えずに済む方法を選択しがちです。

クレプトマニアになると、万引きに依存する生活が当たり前になってしまいます。万引きを止める、つまり行動パターンを変化させるというのはとても大きな不安が伴います。犯罪行為、捕まったら大変なことになるとわかっていても、変化させることが怖くて怖くて、やめることがとても難しくなります。その結果、万引きに依存する生活を続けてしまうという状況になりがちです。

やめることを先延ばしにして盗り続けた

わたしは頭でいろいろと考える癖があります。頭の中で「あーでもない、こーでもない」といろいろと考える、でも結局行動しない、「石橋を叩きまくって渡らない」そういうことがしょっちゅうあります。

考えていることの多くは先取り不安です。「失敗したらどうしよう…」、「うまくいかなかったらどうしよう…」、まだなってもいないことに想像を巡らせ、不安になっています。だったら現状維持がいい、そう考えて行動しない選択をしてしまいます。「できない」のではなく、「やらない」・「やろうとしてない」、結局逃げてる、そういうことがたくさんあります。

万引きについてもそうです。万引きを止めたくなかったです。万引きに依存する生活を変えたくなかった、変えるのが怖かったです。「万引きをしないで、ちゃんと買う生活になったらお金が無くなってしまうのではないか…」などと、まだやってもいないちゃんと買う生活に不安を抱き、変えることを恐れました。そして「認知の歪み」という名の言い訳を並べ、やめることを先延ばしにし続けました。

できない理由探しより、どうやったらできるかを考える

変化は怖いし、変化させるのはとても勇気がいることです。変化させない理由を探せばいくらでも出てくることも多いです。でも、それでは前に進めないと思います。「どうしてできないのか?」で留めるのではなく、「じゃあ、どうやったらできるか?」それを具体的に考えていく必要があります。

窃盗に依存していた頃は、とにかくやめたくなかったし、やめないための理由探しをしていました。何かと理由をつけて、やめることを先延ばししていました。どうやったらバレずに続けられるかを考えてばかりいました。そして仕事があるから、他にやることがあるからと回復への取り組みに真剣に向き合うことから逃げ回っていました。でもそこを乗り越えて「どうしたら捕まらないか?」・「窃盗行為の正当化」ではなく、「どうしたらやめられるのか?」と向き合っていかないといけなかったのだと思います。

では、どうやって行動を変えていくか?行動を具体的にイメージすることがとても大切です。「万引きしない」という漠然としたものではなく、「一人ではお店に行かず、必ず家族同伴で行く」、「商品をかごに入れ、レジに並びちゃんとお金を払ってお店を出る」、「仕事後の疲れているときにはお店に行かずにまっすぐ家に帰る」など、より具体的に考えてみることをお勧めします。

「一生懸命だと知恵がでる。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る」 、言い訳はできない理由探し、でもそこでやめずに一生懸命考えれば、知恵が出てくると思います。 言い訳できる能力は悪いことではないです。そこで止めずに一生懸命に考えれば、どうやったらできるかの知恵が出てくるはずです。言い訳で止めずに、知恵が出てくるまで考え、具体的な行動につなげることが大切なのではないかと思います。

とりあえず、今の行動を変える

いろいろ頭の中で考えても、やってみないとわからないんですよね。それなのに頭の中でいろいろ考えて、結局行動しない、そんなことを何度も繰り返しました。でも、頭の中で考えているだけでは何も変わらない。行動しないと変わりません。そして、行動を変えられるのは本人だけです。結局は本人が行動するしかない。家族や周囲がいくら手を尽くしても、本人が回復に向けた取り組みに本気にならないとどうしようもない、それは自分の経験からも言えます。

「一度行動したら取り返しがつかない、それをやり続けなきゃいけない」というような0か10かの白黒思考に囚われてしまうこともあります。「一生ガマンするのは無理、だからやり続ける」などといった考え方です。でも、そんなに白黒する必要もない、とりあえず今日はガマンしてみよう、そのくらいの方が上手くいきやすいです。また、すぐにわかりやすい結果が出ることを求めがちです。いきなりうまくいくことの方が少ないと思いますが、すぐに100点満点を欲しがってしまいます。「とりあえず、やってみる」、「少しでいいからやってみる」、「すぐに結果が出なくても、極端にマイナスにならない限り続けてみる」そのくらいの気持ちで、行動を変えてみるとよいかもしれません。

有名なことばに「こころが変われば、行動が変わる」というものがあります。その後も続きます。確かにこころが変われば行動は変えやすくなります。でも、こころが変わるのを待っている暇はないこともたくさんあります。「こころが変わっていなくても、行動する」、「やめたいと思えていなくても、今日一日やめてみる」、行動を変えることがこころの変化につながることも十分にあり得ます。

こちらに詳しく書いています。

うまくいかなかったら、そこから学べばいい

そして、失敗した方法をずっとやり続けなきゃいけないわけではありません。また変化させればいい、元の方法に戻ってもいいわけです。行動してみて失敗したらその失敗から学べばいいし、その失敗は行動したからこそ得られるものです。失敗は悪いことではないです。

でも、「失敗は悪いこと」として恐れる人がとても多く、わたしもその一人です。そして、その失敗の基準が厳しく、周囲から見れば失敗ではないようなことも失敗と捉えてしまうので、より行動することを躊躇しがちです。「変化させて失敗するくらいなら、行動しない」、そうなってしまうのです。

失敗への不安は「失敗したら怒られる」・「弱みを見せたら自分が否定される」というような幼少期の体験に基づくことも多いのではないかと思います。「まずチャレンジしたことが素晴らしい!失敗しても大丈夫、そこから学べることも多くある」、自分自身に言い聞かせましょう。

最初の一歩が苦手?継続が苦手?

こんなことを書いたのは、わたし自身、行動を変えることが本当に苦手だからです。わたしは0から1にする、つまり最初の一歩を踏み出すのが本当に苦手で、そこまでがとても慎重です。でも1になると10にも100にもしやすい、最初の一歩が出せると継続することはそこまで苦ではないことが多いです。一方、最初の一歩は出せるんだけど継続するのが苦手というタイプの人もいます。変えられたけど戻ってしまう、そういうタイプです。

「行動を変えて、それを継続する」、これを目標としたときにどこで躓いてしまいがちなのか?そこを分析して対応法を考えておくと、結果につながりやすいと思います。

そして、すぐに結果は出なくてもいいし、むしろ出ないことの方が多いと思います。小さな変化でも積み重ねれば確実に変わっていきます。いきなり大きな変化を求めない、小さな一歩でいいからこつこつと、それもとても大事かなと。

不安を軽減してくれるのが他者の経験談

変えるのは怖いです。勇気がいります。何か行動するとき、その先のイメージが湧かないと不安が強まります。でもどこかでキヨミズの舞台から飛び降りる覚悟を決めないといけないと思います。その舞台の高さを低くし、飛び降りる勇気を与えてくれる強力な手段が仲間の経験談を聞くことです。そこでぜひ活用していただきたいのがクレプトマニア当事者が集まる自助グループです。自助グループに参加すれば、仲間の体験談を聞くことができます。

そこには「窃盗に依存しない生活を送る」という目的を持った人が集まっています。手放せていない人・手放せた人、クリーンが長い人、専門的治療を受けた人・受けてない人、自助グループに参加している人・初めての人、いろんな仲間がいます。そこでは言いっぱなし・聞きっぱなしのミーティングが開催されています。仲間の話を聞くのはもちろん、自身の経験を話すことで気持ちが楽になることもあります。
窃盗はダメ、絶対です。被害者のいる犯罪行為、病気を理由に許されるものではありません。だからこそ、手放すためにみんなで経験談を共有しています。多くの仲間の話を聞くことでたくさんのヒントが得られると思います。教師・反面教師がたくさんいますから。

わたしは今、オンライン自助グループを運営しています。週に1回のミーティング以外にもオープンチャットも運営しています。同じ悩みを抱えている仲間とつながることで、大きな変化が生まれる可能性が高まります。最初の一歩は勇気がいるかもしれませんが、その一歩を踏み出せるのも本人のみです。ぜひ一緒に頑張りましょう!

やればできる やらなきゃできない

行動をするかしないか、それによって「あのとき、やっておけばよかった」が「あのとき、やっておいてよかった」に変わります。

やればできます、すぐに結果は出なくても続ければできるようになるはずです。そして何より、やらなきゃできません。「変えられるものを変えていく勇気」を持って行動し続ければ、いつか必ず結果が出るはずです。

一緒に、頑張りましょう!

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