書籍紹介『10代のためのもしかして摂食障害?と思った時に読む本』

書籍情報

この本は摂食障害経験者である作者が、実話に基づいたケースをまんがで紹介し、それについて専門医が解説しているとてもわかりやすい本です。

作者・監修者の紹介

作者はマンガ家・コミックエッセイ作家のおちゃずけさんです。ご自身が高校生の時に摂食障害になって経験から、摂食障害で苦しむ人を減らすことを目的に活動されています。摂食障害当事者に取材し、体験をマンガ化した「摂食障害体験記」をブログで公開されています。高橋 悠の「わたしのクレプトマニア経歴」をマンガにしてくださったのもおちゃずけさんです。

おちゃずけさんのブログ ⇒ https://ameblo.jp/ocyazke00/

監修者の作田 亮一さん(獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター長・教授)は1993年から神経性やせ症の治療をはじめ、2009年に「子どものこころ診療センター」を立ち上げられています。発達障害と小児心身症を専門に診療されている方です。

本の構成(目次)

PARTⅠ 摂食障害ってなに?
 Chapter1 摂食障害はどんな病気?
 Chapter2 摂食障害になるきっかけはなに?
 Chapter3 摂食障害になったらどうなってしまうの?
 Chapter4 摂食障害になったら体にどんな影響があるの?
 Chapter5 摂食障害になりやすい人って?
 Chapter6 摂食障害かなって思ったらどうすればいいの?
 Chapter7 摂食障害はどんな治療をするの?

PART2 子どもが摂食障害かな?と思ったら…
 Chapter1 保護者の方へ【子どもの様子が気になったら…】
 Chapter2 養護の先生へ【生徒の様子が気になったら…】
 Chapter3 養護の先生へ【保護者・本人への受診の進め方】
 Chapter4 保護者の方へ【通院治療になったら…】
 Chapter5 保護者・養護の先生へ【入院治療】
 Chapter6 保護者・養護の先生へ【退院後】
 Chapter7 保護者・養護の先生へ【退院後の見守り】

本の内容

この本は摂食障害について、マンガと解説、そして医師によるQ&Aなどでわかりやすく書かれています。PART1では摂食障害についての知識、PART2では保護者や教員など周囲の対応方法についてが紹介されています。マンガに書かれている内容はどれも本当の内容です。摂食障害の原因はダイエットとは限らないこと、必ずしも体型に変化が出るとはわけではないことなど摂食障害について知ってほしい知識やケースが書かれており、とてもわかりやすいです。摂食障害からクレプトマニアになってしまうことがあることも触れられています。また、コラムとして摂食障害当事者からのメッセージや、SNSへの注意喚起なども書かれています。既に摂食障害に苦しんでいる人に向けられた情報も多く掲載されています。

一般的に摂食障害に対して持たれているイメージについて、正しいものもあればそうでないものもあります。この本では発症の経緯や症状の変化、そして重症例まで幅広く紹介されています。摂食障害は早期発見・早期治療が大切であり、対応が遅れ重症化してしまうと命に関わる問題になることもあります。早期発見には正しい知識が必要です。そんな知識が読みやすい形で書かれており、多くの人におすすめできる内容です。

わたしが読んで感じたこと

この本を読んでまず感じたことは「いいな、こんな本があって。」ということです。わたしが摂食障害になったのは今から25年以上前のことで、「摂食障害」ということばは医師でも知らない人が多かったと思います。そのため、専門的な治療につながるまでに時間がかかりました。また、わたしが10~20代の頃は摂食障害の原因は母娘の問題であるということが殊更強調されていたように思います。わたしは母との関係は良好だったので、母娘の問題と言われることがとても嫌で、それが通院やカウンセリングをやめてしまった一因になりました。

この本には摂食障害の基礎知識や対応方法などが、まんがと医師による解説でとても分かりやすく掲載されています。「摂食障害になると体型に変化が出る」、「ダイエットが原因で摂食障害になる」、「原因は家庭環境にある」などは、以前から言われていて当てはまることも多いのですが、そうとも限りません。このようなちょっとした誤解について丁寧に説明されており、とてもわかりやすいです。そして当事者のわたしから見て、「ほんと、そう!」と思うような、「摂食障害あるある」がたくさん載っています。これは摂食障害経験のあるおちゃずけさんが、多くの当事者に取材したからこそ描ける内容だと思います。さらに、クレプトマニアについての部分は食費節約の努力から万引きに至ってしまう経緯までが書かれており、まさにわたしが歩んだパターンです。この本を親子で読んで、摂食障害患者が万引きをしてしまうことがあるという共通認識があれば、万引きしてしまったとしても親に正直に話しやすく、対策を立てることでクレプトマニアに至らずに解決できることもあるのではないかと感じました。

この本を読むことで、摂食障害の予防や早期発見・早期治療が可能になれば、失わずに済むものがたくさんある気がします。わたしが10代の頃にこれだけの摂食障害の情報が載った本に出会えていたら、違う人生があったのではないか、そう思うくらいの本です。

この本のタイトル、良い意味でちょっと違うのではないかと思います。「10代のための」、いやいや、10代の人たちだけでなく、学校の先生や子育て中の親など、10代の子供たちに関わっていく可能性がある人に幅広く読んでほしいです。そして「摂食障害?と思った時」はもちろん、そうは思っていない段階でもぜひ読んでほしいです。一人でも多くの人が摂食障害について知ることで、予防や早期発見・早期治療につながると思います。

そして、アルコール依存や薬物依存、クレプトマニアなどの依存症患者には摂食障害を経験している人がとても多いです。この本を読んで摂食障害を予防したり、早期発見・早期治療により回復することは将来的な依存症を予防することにもつながるはずです。

多くの学校の図書室や保健室、子育て中の親が集まる公民館など、気軽に読める場所に置いてあってほしい、そして、摂食障害について理解を深めることで早期発見・早期治療により摂食障害で苦しむ人が減ってほしい、摂食障害からクレプトマニアに至ったわたしはそう強く思います。とても読みやすくわかりやすい、素敵な本です。

書籍情報

作者:おちゃずけ(マンガ家・コミックエッセイ作家、摂食障害経験者)
監修者:作田 亮一(獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター長・教授)
出版社:合同出版株式会社 発行日:2021年7月 定価:\1,400+税

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