書籍紹介『万引き依存症』

この本は万引き依存症(クレプトマニア)について、一般人向けにわかりやすく書かれた本です。
発売当初は新聞などでも紹介され、本屋さんに平積みになった話題の本です。

著者の紹介

この本の著者は精神保健福祉士・社会福祉士で大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さんです。
ソーシャルワーカーとしてアルコール・ギャンブル・薬物・摂食障害・虐待・DV・クレプトマニアなど様々な依存症治療に長く携わっていらっしゃいます。
専門は加害者臨床で、「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいらっしゃいます。

本の構成(目次)

第1章 万引きを繰り返す人たち
第2章 被害者が見えづらい深刻な犯罪
第3章 なぜ女性が多いのか
第4章 なぜやめられず、エスカレートするのか
第5章 高齢者と摂食障害と万引き
第6章 「万引きしない自分」に変わるために
第7章 特別対談 伊東ゆう(万引きGメン)× 斉藤章佳

本の内容

都内のクリニックに勤務する治療者が、万引き依存症(クレプトマニア)についてその実態や被害状況、回復するための道筋などを書いています。
専門家によって一般読者向けに書かれた本で、クレプトマニアについて知らない人でもとても理解しやすく読みやすい内容になっています。

第1~5章ではクレプトマニアの考え方や行動、関連するデータなどが具体例を交えながら紹介されています。
著者がソーシャルワーカーとして患者と接しているということもあり、他人には言いにくいようなクレプトマニアの本音が随所に登場します。
当事者が読んでも、「そうそう!」と思わず頷きたくなるような、「クレプトマニアあるある」が満載です。

第5章ではクレプトマニアと関連が深いとされる摂食障害についてや、最近注目が高まっている高齢者の万引きについても、その原因や社会的背景などが詳細に記載されています。
クレプトマニアの存在はそう遠いものではないということがご理解いただけると思います。

第6章では、クレプトマニアから回復するためのクリニックでの取り組みも紹介されています。
クレプトマニアの回復に向けてヒントになると思われる記述も多く、具体的な回復のイメージを膨らませることに役立つ内容です。

最終章には被害状況や被害者心理を知るための試みとして、著者と万引きGメン(私服保安員)である伊東ゆうさんの対談が掲載されています。
被害者側からクレプトマニアについての意見を聞けることは少なく、大変興味深いです。

わたしが読んで感じたこと

初めてこの本を読んだとき、何度も「そうそう、そうなんだよ!」と言いたくなりました。
自分が持つクレプトマニア的思考や行動が、文章になっていたからです。

この感覚は、自助グループで同じ悩みを抱えた仲間の発言に共感した時と似ていると思います。
「万引きがやめられないなんて自分だけだ」、「こんな気持ちはだれにもわかってもらえるわけがない」と思っているようなことが文章になっているのです。

同じような悩みを抱え、さらにその状況から回復した人がいると知ることは、クレプトマニア当事者や家族にとって、とても勇気づけられることだと思います。
万引きがやめられないことで悩む本人やご家族、関係者の方に読んでいただくとよいと感じました。

この本に書かれているクレプトマニアの具体例は、普通の感覚の人からすればにわかには信じられないようなものも多いです。
父もこの本を読んだのですが、そのタイミングはわたしが今までの経験を正直に話すようになってからでした。
父は「実際にクレプトマニアがどんな状況になるかを知ったうえで読んだから、なるほどと思うけど、知らなかったら、ちょっと大げさに書いてると思ってしまうかも?」と言っていました。

普通の人から見れば、クレプトマニアの感覚は「現実は小説より奇なり」というレベルなのかもしれません。
そんなクレプトマニアの実態をイメージしていただくにはもってこいの本だと思います。

一般向けにとても読みやすく書かれているので、クレプトマニアについて詳しく知りたいと思っている人はもちろん、クレプトマニアについてほとんど知らない人にもぜひ読んでいただきたい本です。

書籍情報

著者:斉藤 章佳(精神保健福祉士・社会福祉士 大森榎本クリニック精神保健福祉部長)
出版社:イースト・プレス 発行日:2018年9月 定価:\1,500+税

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