依存症に多い「認知の歪み」とは?
「認知の歪み」はすべての依存症に見られるとされる認知体系(考え方の特徴)です。ここでは認知の歪みについてご紹介していきます。
認知の歪みとは?
「認知の歪み」とは誇張的で非合理的な思考パターンのこと。ここでいう「認知」とは、「現実の受け取り方」や「ものの見方・感じ方」のことです。「認知の歪みがある」というのは「ものの見方や感じ方が歪んでいる」状態、つまり偏った考え方を持っている状態と言えます。
うつ病や依存症の患者の多くに認知の歪みがあるとされています。
認知の歪み、10のパターン
認知の歪みには10個のパターンがあります。これらを知っておくと、認知の歪みに気が付きやすくなると思います。
全か無かの思考
グレー(中間)がなく、ものごとすべてを白黒はっきりさせて認識する思考です。少し間違っただけでも完全な失敗と考えるなど、極端で完璧主義的な思考に走りがちになります。「常に~」、「すべて~」、「絶対~」などと極端な言葉を使う傾向があります。
行き過ぎた一般化
一部で起こっていることを、全体のことに広げて考えてしまう思考パターン。最初の一回で失敗すると、これからも絶対にできないと考えるなど、一度起こっただけの悪い出来事を常に起きることだと考えるような思考です。「あの人がわたしを嫌っているから、みんなもわたしのことを嫌っているに違いない」などと考えます。
心のフィルター
ものごと全体の悪い部分ばかりに目がいき、良い部分が除外されてしまう思考パターンを言います。100点満点のテストで80点をとったとき、間違えた部分ばかりに目が行き「どうして20点間違えてしまったのだろう?」と考えてしまう思考です。
マイナス化思考(プラスの否定)
良いことを良いと捉えられなくなったり、良いことを悪いことに置き換えてしまう思考パターンです。「うまくいったのはまぐれだ」、「くじが当たって運を使い果たしてしまった。次は悪いことが起こるに違いない」などという考え方です。プラスのことを無視するだけでなく、むしろマイナスにしてしまうというもので、認知の歪みの思考パターンの中でもたちが悪いものとされています。
論理の飛躍
論理の飛躍は大きく2つに分けられます。相手の行動やことばから、最悪のケースを推測し、本当かどうかを確かめずに決めつけてしまうのが「心の先読み」です。「あの人の機嫌がよくないのは、わたしがあの人を怒らせてしまったせいだ」などと決めつけ、本当の理由を確かめようとしません。
もう一つが「先読みの誤り」で、ものごとが悪い結果をもたらすと推測し、マイナスな結論に発展してしまう思考ですパターンです。「今日うまくいかなかったから、一生うまくいかないだろう」などと考えてしまいます。
拡大解釈・過少評価
良いことを小さく、悪いこと大きくとらえてしまう思考パターンです。自分のことについては失敗や弱みを大きくとらえ、成功や強みを小さくとらえてしまいます。一方他人のことに関しては、逆になり、ちょっとしたことを成功や強みを過大に評価し、失敗や弱みは過少に考えます。「あの人の作品は立派なのに、わたしのものはなんて下手なんだろう」といったように自分には厳しく、他人には寛容になります。
感情的決めつけ
自身の気分や感情だけを根拠にして、自分の考えが正しいと決めつけてしまう思考パターンです。気分や感情は、一過性であることも多くいつまでも続くわけではありません。しかし感情的な決めつけがあると、自分の感情が現実でそれが続くと考えてしまいます。「あの人はわたしのことを嫌っているから、これからも話しかけてくれないだろう」などと考えます。
すべき思考
「ゴミが落ちていたら拾うべきだ」、「優先席に健常者は座るべきではない」などと、自分で考えた基準が当然であると考える思考パターンです。 これらの基準に合わないと自己嫌悪や罪悪感を感じるようになります。「守るべきルールを守れなかった、わたしはなんて愚かな人間だ」などと考えてしまいます。また、これの基準を他人にも当てはめようとするため人の行動にがっかりさせられることが多くなってしまいます。
レッテル貼り
人やものごとを単純化し、間違った捉え方でネガティブなイメージを作り上げてしまう思考パターンです。「わたしはダメ人間だから、何をやってもうまくいかない。」、「近頃の若いヤツはけしからん!」などという考え方です。行き過ぎた一般化の深刻なケースであると考えられています。
誤った自己責任化(個人化)
あるマイナスのできごとの責任や原因が、関係のない自分にあると考えたり、必要以上に自分に責任があると考える思考パターンです。 「電車が遅れたのはわたしの日々の行いが悪いせいだ。」、「綱引きで負けたのはみんなには責任はない。すべてわたしのせいだ。」などと考えます。
「認知の歪みがある」=「悪いこと」ではない
これらの思考パターンにあてはまるからといって、それがいけないというわけではありません。「認知の歪みがあるからどうしようもない」、「認知の歪みに多くあてはまるとは、自分はなんてダメなんだろう」、このような発想こそが「認知の歪み」です。
これらのパターンで当てはまるかどうかを考えることは良い・悪いを判断することが目的ではありません。思考の偏りの有無を知るための一つの手段です。認知の歪みのパターンを知ると、歪みに気が付きやすくなります。
「これ、当てはまるな」というものがある人は自分の考え方にそのような特徴があるということです。そのような特徴があると認識することが大事です。認識できれば、修正がしやすくなります。
認知の歪みに関連する内容はこちらにも書いています。
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