書籍紹介 『私が欲しかったもの』

2021年4月7日

元トップマラソンランナーで摂食障害・窃盗症当事者である原 裕美子さんの”生きづらさ”の壮絶告白が綴られています。

著者の紹介

著者は2005年世界陸上女子マラソン日本代表の原 裕美子さんです。高校で長距離選手として活躍し、卒業後は実業団に所属し、マラソン選手として活躍します。引退後は市民ランナーや子供を対象にマラソン指導などを行っていましたが、現役時代から摂食障害・窃盗症に苦しんでいました。2017年8月には窃盗事件で逮捕されたことが大々的に報道されましたが、翌年執行猶予中に再逮捕され、その際に窃盗症であることを告白しています。現在は治療を継続しながら、回復の道を歩んでいます。

本の構成(目次)

第1章 瘦せるために吐く
第2章 ただ走ることが好きだった
第3章 壊れていく体
第4章 盗まずにいられない心
第5章 1300万円の裏切り
第6章 求め続けた幸せ
第7章 弱さを隠さないで生きる

本の内容

この本には元トップマラソンランナーである原 裕美子さんの半生が綴られています。前半は走ることが好きだった小学生の頃から、陸上選手として頭角を現し始めた高校時代、そしてトップランナーとして活躍した実業団選手時代、主に厳しい練習と摂食障害の発症について書かれています。厳しい食事・体重管理によって精神的に追い込まれ、摂食障害につながっていく様子がありありと記載されています。そして後半は、現役中の万引きの始まりから引退後の数々のトラブルによる窃盗症の悪化と逮捕、回復への取り組みなど窃盗症についての文章が続きます。原さんの回復に効果があった治療法である「条件反射制御法」も詳しく紹介されています。最後には摂食障害・窃盗症当事者として同じ苦しみを持つ人たちへのメッセージが記載されています。

わたしが読んで感じたこと

この本の著者である原 裕美子さんは世界陸上にも出場した元トップマラソンランナーです。最近になり、厳しい指導や体重管理をきっかけとした若年アスリートの摂食障害の問題が注目されていますが、原さんの場合がその典型です。発症の経緯こそ違うもののわたしも摂食障害・過食嘔吐があり、この本の心理描写には共感するものが多くありました。また、過食嘔吐のための食べ物を万引きしてしまう心理状況については、当事者だからこそわかるような表現が並んでおり、引き込まれるように読んでしまいました。クレプトマニア当事者の方が読めば共感する部分が多く、このような状態から回復の道を歩んでいる原さんの姿はとても勇気づけられると思います。

摂食障害についても窃盗症についても、生活状況の変化やトラブルに巻き込まれた時の状況など、精神状況と症状変化の関連が詳細に書かれています。このようにきちんと過去と向き合い、その状況を分析することは今後の再発予防のためにもとても有益なことだと感じました。

エピローグには『この(最後に執行猶予判決をうけてからの)2年間で「隠さずに生きる」ことがいかに楽なことかを私は学びました。』と書かれています。最後の方にストレッチをしている写真が掲載されているのですが、その表情は2回目の執行猶予判決を受けた直後のインタビューの時とは全然違います。この変化が「隠さずに生きる」ことによって生まれているものなのだろうと思います。当事者の人は読み進めるのが苦しくなってしまうこともあるかもしれないと、本の中にも書かれています。そのくらいリアリティがあり、読み応えがあります。回復のイメージを膨らませる上で、おすすめの一冊です。

書籍情報

著者:原 裕美子(元マラソンランナー 2005年世界陸上マラソン代表)
出版社:双葉社 発行日:2021年3月 定価:\1300+税

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