自分なりの「盗らない生活」を探してみる

盗らないための工夫,万引きを手放すために

同じクレプトマニアでも、症状や環境などが違えば、対策も変わってきます。自分なりの「盗らない生活」を探してみましょう。

盗らないために、まずは盗りたくなる状況を把握する

盗らない生活を送るためにも、盗りたくなる状況を把握することはとても大切です。そうすることで、盗りたくなる状況を避けたり、身構えることができます。

「盗れる環境で盗らない」

クレプトマニアが万引きをしないための方法として、「一人でお店に行かない」という方法があります。「盗れる環境に身を置かない」というものです。お店に行かなければ万引きはできませんので、これができれば万引きのリスクは激減します。

しかし日常生活では、買い物に行かずに生活するというのは結構難しいです。通販やネットスーパーが発達してきたとはいえ、利用できない地域や商品も多くあります。家族に同伴してもらい、一人で買い物に行かないということはできますが、それが難しい人もいます。また、一時的にはできても、その生活を一生継続するというのはかなり大変です。

わたしの場合、万引きを止められなかった頃は「お店に行かなければ、万引きしないで済む」ということは頭ではわかっていました。しかし、お店に行くことをガマンすることができませんでした。仕事帰り、万引きをしないためにもまっすぐに家に帰ろうと思っていても、改札を出るとお店に立ち寄らずにはいられませんでした。お店に行ったら行ったで、「お店に行っても盗らなければいい」始めはそう思うのです。でも、結局は我慢できず万引きをしてしまうという状態でした。また、「普段は家族が買い物に行っていたが、料理中に調味料が切れてしまい、少しなら大丈夫だろうと近くのスーパーに行ったら万引きしてしまった。」、「いつも監視下にあることがストレスになり、家族不在の隙を見てお店に行き万引きをしてしまった。」などという話も聞いたことがあります。

こうなると「一人でお店に行かない」ためには、普段から「一人にならない」状態を作らなくてはならず、さらにそれを長く続けるとなるとかなり難しいです。また、そのような監視が厳しい状況にストレスを感じ、盗りたい欲求につながってしまったら本末転倒です。

一人でお店に行っても盗らないという、「盗れる環境でいかに盗らないか?」という方法を探していかないと盗らない生活を続けるのは難しいのかなと思います。

盗ったことのあるお店での買い物は?

わたしは以前万引きをしたことのあるお店にも買い物に行きます。中には出入り禁止になってしまったお店もありますが、「盗ったことのあるお店できちんと買い物をして売り上げに貢献することが贖罪の一つ」という思いがあり、積極的に利用しています。万引きをしていた頃の記憶が蘇ることもありますが、もう2度と迷惑はかけないという気持ちを強めることにつながっているように感じます。
逆に「万引きしていた頃のことを思い出して、気持ちが落ち込んだり、盗りたくなってしまう不安があるので利用しない」、「盗ってた頃と気持ちを切り替えるため、新しくできたお店に行くようにしている」など万引きしていたお店には行きたくない、利用を避けているという人もいます

どちらが正解というわけではありません。時間経過によっても変化してくると思います。いずれにしても自分の正直な気持ちを把握し、行動を選択することが重要になります。

買い物はさっと済ませるべきという意見が多いけど…

店内を回る時間が長くなれば、それだけ誘惑にさらされる時間が長くなります。そのため、事前に買うものを決め、メモを用意し、最短ルートを回り手短に買い物を済ませるという方法を実践している人も多いです。

でもわたしは真逆で、時間をかけて店内を回ってじっくりと商品を吟味します。基本的にケチなので、じっくり吟味して納得したうえで商品を買いたいからです。お店も一つの店舗で済ませるのではなく、複数の店舗を回って少しでもお得なものを探すことをよくやります。このようなじっくり選ぶということをせずに買い物をし、後になってもっと安いものを見つけたりしたら、損した気分になってしまします。この損した気分で、損得勘定にスイッチが入ってしまうことの方が、「損した気がするから、盗ってとりかえそう」と万引きしたくなってしまうリスクが高いと感じています。

人によって、感じ方は様々ですね。

支払いはカード?現金?

「現金支払いだとお金が減るのがはっきりわかり、枯渇恐怖が強くなってしまうのでカード支払いがいい。」という人がいます。逆に、「カードだとお金を使っている感覚が少なくて、使い過ぎが怖いから現金払いがいい。」という人もいます。また、わたしは「ポイントを貯めて、お得感を味わいたい。」という別の理由もあり、カード支払いです。

カードにもいろんな種類があるので、あう方法を探してみましょう。

大型チェーン店に行く?個人商店に行く?

これも意見の分かれるところです。「チェーン店などの大型店舗の方が防犯カメラなど警備が厳しい。それに比べると個人商店は警備が甘い気がして盗りたくなってしまう」という人もいれば、「個人商店で万引きすると経営への影響が大きい気がして情が湧き、万引きしなかった。大型店舗なら多少の万引きしても痛手は少ないだろう考え、少しでも罪悪感を少なくするために大型店舗で盗っていた」などという話も聞きます。(これは完全に認知の歪みです!どんなお店でも万引きはだめです!)

無人野菜スタンドなど「捕まる可能性が低い」と思ってしまう場所はリスクが高いと思います。特に万引きをガマンしている理由が「盗りたくない」ではなく「捕まりたくない」という気持ちである人にとっては、「ここなら捕まらないだろう」という気持ちが生まれやすく、危険です。基本的には「クレプトマニアにとっては警備の厳しい店の方が安全な店」と言えます。人によって感じ方が真逆だったりもしますので、自分にとっての盗らない生活のための店選びを身に着けられるとよいと思います。

割引品はお得だけど、手を出さない人も

わたしは盗らない生活を送れるようになった今でも「節約依存」です。ちゃんと買いつつも出費を抑えることに満足感・達成感を得ています。買い物に囚われているので一種の「買い物依存」です。そのため割引品なども積極的に購入します。わたしはまだまだ何かに依存することが必要というか、適度な依存先を探しています。買い物に囚われない生活を送れるようになるのが一番良いのですが、万引きに依存するくらいなら、今のちゃんと買い物をする中での節約依存の方がよっぽどいいです。

わたしの場合、万引きを繰り返したのも「節約依存」の行き過ぎた結果だと思っています。安いものを求めてお店をはしごしたり、割引になる時間を待ったりと真っ当な方法で節約している状態から、更なる満足感・達成感を求めて、割引シールの貼り替えやセルフレジでの悪さなど違法行為にまで手を出すようになりました。そして、最終的には究極の節約である万引きに依存してしまったのだと思います。

「お金をなるべく減らしたくない、節約したい」という思いは今でもあり、その思い自体が悪いことではありません。ちゃんとルールさえ守れれば「やりくり上手」です。そして、上手く節約することは枯渇恐怖と付き合っていく中で必要なことだと感じています。「買うことをガマンしたり、安いものを買って出費を減らすのが節約。買わずに盗ってお金を使わないのは犯罪、絶対やらない」、当たり前ですがここはしっかり押さえておかなくてはいけないところ。この一線は越えてはいけないという自分ルールを明確にしたうえで、お店をはしごしたり、割引品を買ったりと「ちゃんと買うことでの節約」をしています。

一方で真逆の作戦を取る人もいます。「割引品を買おうとしているのは損得勘定が出ている証拠。安物買いの銭失いになる可能性も高い。だから、割引コーナーはスルー、一切手を出さない」という方法です。自分なりの越えてはいけないという一線を「割引品は一切買わない」というところに設定しているパターンです。個人的にはこれは白黒思考が強く、極端に我慢してしまうのでストレスがたまりやすいのではないかと感じます。無理に抑え込んで、一気に爆発というリスクもあるのかなと。「たまには割引品を買うくらいならいいか」とゆったりと構えられた方が、ストレスも少なく長く続けやすいのではないかとも思います。

きちんと買い物をするというのは、この先ずっとついて回ることであり、無理せずに続けられる方法を模索する必要があります。白黒思考が強いこともアディクトに良くみられる特徴の一つ。「たまには割引品でお得な気分を味わおうかな」などと、柔軟にとらえられるようになることも大切なのではないかなと思います。

適度なため込みを許すことで、ストレスを貯めない

クレプトマニアの中でも摂食障害を合併している場合には「ため込み」が見られることが多いとされています。「ため込みをしないと不安」という心理状況によるものですが、ため込みはエスカレートしやすいのでできればないに越したことはありません。

わたしも盗らない生活になり、ため込みを減らそうとし、ある程度は減らせましたが、正直あまりうまくいきませんでした。ため込みがないと枯渇恐怖が強まってしまい、逆に多くものを買ってしまうという状況になりました。また、ため込みを減らそうとすること自体がストレスになってしまいました。

また、ちゃんと買っているからこそため込みたくなるということがわかりました。盗っていた頃は「明日食べるものは、明日盗ればいいや」というような感覚でした。盗らない生活の今は、「明日高くなってたら損した気分になるし、安いから今のうちに買い込んでおかなきゃ」という感じで、安いものを買い込んでため込んでしまっています。でも、この買い込み・ため込みを許さないと、「昨日買っておけば安く買えたのに、今日は高くなってる。損した!」というような損得勘定が湧き上がりやすくなります。そして、この損得勘定が強まることで、「損した、だから盗ってしまえ!」と盗る方向にスイッチが入ってしまう可能性が否定できません

その結果、今ではある程度のため込みは仕方ないと割り切っています。わたしなりの妥協点です。

クレプトマニアなどの依存症患者には、白黒はっきりとした思考の持ち主が多いとされています。少しでもうまくいかないことがあると、「あーだめだ」と否定的にとらえがちです。ため込みの例に限らず、「ある程度は仕方ない。」とどっしりと構えることも必要だと思います。

ため込み対策に効果を感じている方法はこちらです。

自分に合った方法を見つけることが大事

とある仲間の話。

『スリップ(単発の失敗)をした後に病院のプログラムで、スリップの経緯を振り返って対策を立てた。たくさん考えて「これだけやったんだから絶対大丈夫」と変な自信を持っていた。その度にスリップした。「絶対、大丈夫」それが油断につながった。でも最後にスリップした時は「これだけ考えたから大丈夫だとは思うけど、絶対はない。だから安心してはいけないし、盗ってしまってもある意味仕方ない。それよりもスリップしたらすぐに助けを求めよう」と思った。それが最後のスリップ。適度な自信は必要だけど、過信はダメ。できることをしっかりやる、その結果スリップしてしまったら仕方ない、そう思えるようになって気が楽になったことが盗らない生活につながっていると思う。』

どの方法も絶対というものはありませんが、「これだけやったんだから大丈夫」と適度な、いい意味での自信を持って臨むことが大事だと思います。また矛盾するようですが、「これだけ対策をしたのだから、盗ってしまっても仕方ない」くらいの開き直りも必要なのかもしれません。

仲間の経験や体験を参考に、さらに自分なりの成功体験を積み重ねて、自分にあった盗らない生活スタイルを作っていくというのが本当に大事だと思います。そして、うまくいった時には自分で自分をほめてあげましょう。

関連する項目はこちらです。