書籍紹介『窃盗症(クレプトマニア)その理解と支援』

書籍情報

この本はクレプトマニアの理解や支援について、当事者や家族の体験談やそれぞれの専門家の立場から回復に向けた取り組みが書かれています。

編者の紹介

編者は竹村道夫さん、吉岡隆さんです。竹村道夫さんは医師・精神保健指定医・精神科専門医で、赤城高原ホスピタル(群馬県)院長・京橋メンタルクリニック(東京都)勤務医をされています。吉岡隆さんはソーシャルワーカーで、こころの相談室「リカバリー」の代表を務められています。

それぞれの節は上記編者に加え、林大悟さん(弁護士)、沢登文治さん(法律家)、井田香奈子さん(記者)、今井亮一さん(フリージャーナリスト)、松本功さん(医師)、羽生麻里さん(仮名・当事者)、赤木秀さん(仮名・当事者)が執筆されており、それぞれの立場から専門的な内容の知識が記載されています。

本の構成(目次)

序章 アディクションとクレプトマニア
第1章 当事者と家族の体験
 第1節 当事者が語る
 第2節 家族が語る
第2章 回復に向けて
 第1節 医療の立場から
 第2節 相談支援の立場から
 第3節 司法の立場から
 第4節 法律学の立場から
 第5節 ジャーナリズムの立場から
 第6節 治療期間における実践活動
資料 窃盗癖関連新聞記事リストと要旨

本の内容

第1章では「当事者と家族の経験」として、当事者11人・家族5人の体験談が掲載されています。当事者も摂食障害とクレプトマニアの合併例、執行猶予中、複数回の服役経験者など多岐にわたります。実体験に基づく文章は、リアリティがありとても読みごたえがあります。

第2章では弁護士、法律家、ジャーナリスト、医師などの専門家が、それぞれの立場から一歩踏み込んだ知識について記載しています。弁護士は実際にクレプトマニアの弁護を担当した経験、法律家はクレプトマニアに対する刑務所内での改善指導など、ジャーナリストはクレプトマニアの報道について記載するなど、実例を交えた文章になっています。

クレプトマニアについて医学的側面から社会的側面まで多くの知識を得ることができます。

わたしが読んで感じたこと

この本では全体の約1/3が当事者や家族の体験談となっています。クレプトマニアはその数が多くなく、体験談を知る機会が少ないのでとても貴重です。特筆すべきは、当事者だけでなく、家族の体験談についても掲載されいる点です。当事者だけでなくその家族も苦しむことが多いのが依存症であり、回復においても家族が重要な役割を果たすことが多いからです。また当事者は家族にはなり得ず、家族は当事者にはなり得ないので、それぞれの立場からの体験談を読むことは双方が理解を深める上でとても意義深いのではないかと感じます。

第2章の専門家の立場からの内容は、実例に基づいた専門知識が記載されています。そのためやや難解な印象を受けますが、じっくり読み進めるとクレプトマニアに対するいろんな取り組みが行われていることなど、一歩踏み込んだ知識を得られると思います。

当事者の体験談に共感したい方や、クレプトマニアについての知識を深めたいという方におおすすめです。

書籍情報

編者:竹村 道夫・吉岡 隆 
出版社:中央法規出版 発行日:2018年5月 定価:\2,700+税

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