コロナウイルスの影響 仲間とのつながりの大切さ

思うことあれこれ

2020年3月、世界のあちこちで新型コロナウイルスの感染拡大が報告され、日本では2月頃からいろんな場面で生活への影響が出てきました。

クレプトマニアという依存症患者の一人として、新型コロナウイルスの依存症への影響を考えてみました。

依存症の回復には自助グループが有効

今回の新型コロナウイルス騒動の影響で一番強く感じたのは、自助グループへの影響です。

自助グループは同じ悩みを抱えた当事者同士が集まり、依存症からの回復に向けてお互いに励ましあいながら活動をしている団体です。その活動の中心はミーティングで、お互いの本音を語り合うことで一緒に回復を目指していきます。依存症からの回復には自助グループへの参加が効果的と言われています。依存症に対しては薬物療法は効果が乏しいと言われており、自助グループなどのミーティングが治療の中心になることが多いです。

自助グループは週1回程度の頻度で開催されているところが多く、複数の自助グループに参加している仲間も多くいます。自助グループに定期的に参加し、仲間の話を聞いたり自分が話をすることで、依存行為に頼らずに生活する努力を続けます。仲間と支えあいながら回復を目指していくのです。

自助グループでの仲間つながりを心の拠り所にしている仲間は本当に多いです。「仲間とつながっているからこそ、回復に向けて頑張れる」、「次のミーティングまで○○をやめ続けるよう頑張ろう」などと、ミーティングに救われているのです。効果的な薬がないと言われている依存症患者にとって、ミーティングで仲間とつながることはある意味「治療薬」なのです。

会場が使用できず、ミーティングが開けない

様々な依存症の自助グループのミーティングは全国各地で開催されています。ミーティング会場として公共施設の会議室を使用している団体も多くあります。

2020年3月に入ると、密室での集まりは新型コロナウイルス感染拡大のリスクが高いとして、多くの公共施設などの会議室が使用不可となりました。その結果、ミーティングが中止になる自助グループが相次ぎました。また総理大臣直々に不要不急の外出は避けるようにとのお達しが出たのもこの頃です。

失ってわかるミーティングのありがたさ

毎週、当たり前のように通っていたミーティングが開催が中止になることは、多くの依存症患者にとって大きな痛手です。依存症患者にとってミーティングがなくなることは、定期的に服用していた「治療薬」がなくなることと同じなのです。

自助グループのミーティングは場所さえ確保できれば、年末年始も開催されることが多くあります。依存症者にとって必要なもの、それは年末年始も関係ありません。年末年始も関係なく、薬を服用するのと同じです。実際、わたしは今年の元日に違うアディクションのミーティングに参加しました。

わたしが通っているクレプトマニアの自助グループは教会の一室をお借りして、通常通り開催することができています。ミサが中止になる中でも継続して会場提供していただいている教会の方々には、本当に感謝してもしきれません。

先日のミーティングには普段より多くの仲間が集まりました。新型コロナウイルスの影響で他の予定がなくなったので、ミーティングに参加したという仲間が多くいました。

ミーティングのような密室での大人数の集まりは感染リスクが高いと言われています。そして、不要不急の外出は避けるようにとのお達しもありました。そんな中でもミーティングの参加者はいつも以上に多かったのです。他の自助グループのミーティングが中止になってしまったので、何とか都合をつけて参加したという仲間もいました。それは依存症仲間たちが、どれだけミーティングを必要としているかということの表れだと思います。

SNS上でも多くの依存症仲間から、ミーティングが中止になることへの不安の声が上がっていました。依存症患者にとっての自助グループのミーティングは「治療薬」と同じような存在であり、「不要不急の用事」ではないのです。

開催が危ぶまれることで、ミーティングで仲間たちとのつながりのありがたさやその意味を再認識しました。

「離れていてもつながれる」新しい取り組み

新型コロナウイルスの影響は各方面に広がっていますが、悪いことばかりではありません。

通勤時間をずらすことによる混雑解消の取り組みは、今後にも活かされる可能性があります。テレワークを活用した在宅ワークシステムの拡大は、多様な働き方を可能にするかもしれません。不要不急な会議を中止させることで、会議の効率化を図ることができ今後に活かせる、などという声も聞かれます。

依存症仲間同士でつながることについても、依存症仲間による対談のインターネット配信や、ネットミーティングの開催など、今までとは違った取り組みが行われています。今回のコロナウイルスの影響によるミーティングの中止騒動により、「離れていてもつながれる」という方法の模索がより盛んになったように思います。

この「離れていてもつながれる」というのはとても意味のあることです。依存症の自助グループは各地で開催されていますが、その数はまだ十分とは言えません。クレプトマニアの自助グループの数はまだまだ少ないですし、開催地域・時間も限られているので、参加したくてもできない人は多くいます。また、依存症であることを周囲に打ち明けておらず、こっそりとつながりたいという人も多いはずです。

仲間とのつながりが回復に役立つとされる依存症にとって、インターネットを利用して「離れていてもつながれる」環境ができることは、回復の可能性を高めることにつながるのではないでしょうか?

イベントライブ配信の意味

新型コロナウイルスの影響の一つに、いろんなイベントが無観客で行われライブ配信されたことがあります。

その一つが2020年3月1日に行われた厚生労働省主催の「依存症の理解を深めるための普及啓発イベント」です。イベントの様子はyoutubeで生中継されました。

元プロ野球選手の清原和博さん、ZIGGYの森重樹一さん、俳優の高知東生さん、歌手の杉田あきひろさん、元NHKアナウンサーの塚本堅一さんらが登壇し、回復には自助グループなどでのつながりがとても重要であることなどが話されました。このイベントに関しては、無観客での実施が決まる以前からライブ配信が予定されていましたが、コロナ騒動の影響でライブ配信が行われることの注目が高まりました。また不要不急の外出を控えた人が多く、通常開催よりも多くの人がライブ配信を鑑賞したと思います。さらに、他のイベントが中止になった影響でマスコミの注目度も高まったようです。

テレビでのニュースや翌日の新聞、インターネットニュースなどでもイベントの様子が大々的に報道されました。また、その内容についても依存症に対して今までになく好意的に書かれたものが多かったように思います。新型コロナウイルスの影響で無観客で行われたことが、結果的に「依存症への理解を深める」といういい方向に作用したように感じました。

悪いことばかりに目を向けても仕方ない

新型コロナウイスルの影響は各方面に及んでいます。テレビや新聞などの報道も、どうしてもネガティブなものが多くなっています。

しかし、悪いことばかりに目を向けても仕方ないです。

自助グループのミーティングが開催できない状況は今後も続くかもしれませんが、その状況を打開するための取り組みも始まっています。インターネットを利用した「離れていてもつながれる」方法が増えることは、依存症からの回復にむけて新たな可能性を広げると言えそうです。

厳しい状況が続いていますが、こういう時こそプラスの作用にも目を向けて今後につなげていきたいと思っています。

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