書籍紹介『万引きがやめられない クレプトマニア(窃盗症)の理解と治療』

この本は、クレプトマニア治療に取り組む精神科医によって、クレプトマニア(窃盗症)についての臨床像と具体的な治療法について書かれたものです。

著者の紹介

編者の吉田精次さんは、精神科の医師です。

吉田精次さんは徳島県にある社会医療法人あいざと会藍里病院・依存症研究所に所属する精神科医で、依存症研究所の所長を務められています。
2005年より依存症を専門に診療されており、日本アルコール関連問題学会評議員・全国断酒連盟顧問・徳島ダルク支援会代表なども務められています。

また、依存症関連の書籍も複数手掛けられています。

あとがきではご自身のことを、「私はけっこうな田舎にある民間の精神科病院の一臨床医です。実験や研究の実績のない、毎日診察ばかりしている精神科医です。」と紹介されています。

本の構成(目次)

はじめに
第1章 不思議な万引き
第2章 クレプトマニアとはどういう病気か
第3章 クレプトマニアの診断基準を読み解く
第4章 クレプトマニアの臨床像
第5章 クレプトマニアのタイプ分類とケーススタディ
第6章 万引きをどうやめるか 考え方
第7章 万引きのやめ方 具体的方法
第8章 誌上クレプトマニア勉強会
付録 万引きを止めるためのワークブック

本の内容

本のカバーには「クレプトマニア(窃盗症)の臨床像と具体的な治療方法について解説したわが国初の本格的な臨床指導書であり、当事者のためのセルフヘルプガイドである。」と書かれています。

第2・3章では、クレプトマニアという疾病概念の歴史や現在使用されている診断基準について、詳細に書かれています。
「診断基準の一字一句にまでこだわりました。」、「専門的であったり、細かすぎて、患者さんや家族には理解しにくい内容になっているかもしれません。」とあり、やや難しい印象がありますが、第4・5章でクレプトマニアの臨床像とタイプ分類による事例解説があり、疾患の具体的なイメージを描きやすくなる構成となっています。

第6・7章では万引きをやめるために必要な考え方や具体的な方法が書かれています。
更に第8章では誌上クレプトマニア勉強会として、著者が院内勉強会で使用しているスライドが紹介されています。

付録として「万引きを止めるためのワークブック」が掲載されており、取り組むことで自分の行動を振り返ったり、自分自身を調べることができるようになっています。

わたしが読んで感じたこと

とても興味深かったのは、第3章で書かれているクレプトマニアの診断基準についてです。
一般的に使われているクレプトマニアの診断基準は、その解釈について意見が分かれています。
よく言われるのが「個人的使用や金銭的価値のための窃盗を繰り返すのは、クレプトマニアではない」のではないかということです。
この本では診断基準について、実際に診断する際の不明点や疑問点を踏まえたうえで、詳細に検討しています。
その結果、その解釈が間違っているということをかなり詳細に解説しています。

わたしが知るクレプトマニアの仲間には「個人的使用や金銭的価値のための窃盗を繰り返す」、状態だった人が多くいます。
実際わたしも、自分が食べるためのものを万引きしていました。
もし、「個人的使用や金銭的価値のための窃盗を繰り返すのは、クレプトマニアではない」という診断基準を文字通りに解釈してしまうと、多くのクレプトマニアがその可能性を否定されてしまいます。
そうすると、間違った解釈により治療につながれないなどという可能性も出てきてしまいます。

クレプトマニアについて正しい理解をしていただき、一人でも多くの人が治療や自助グループなどにつながるために、医療や福祉、法律の専門家の方にもぜひおすすめしたい本です。

診断基準を理解することは当事者にとっては自分の状態を理解することであり、万引きを繰り返してきたときの状況を思い返すことにとても役に立ちました。
他にも「盗もうとする衝動」を図式化したり、クレプトマニアについての誌上勉強会が掲載されていたりと、クレプトマニアについての理解を深められる内容が多く盛り込まれています。
自己診断チェックリストやワークシートも掲載されており、当事者にとっても参考になる本だと感じました。

書籍情報

著者:吉田 精次 
出版社:金剛出版 発行日:2020年4月 定価:¥2,600+税

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