書籍紹介 『セックス依存症』

2021年4月6日

この本はセックス依存症について書かれたものですが、クレプトマニアを含めたプロセス・行為依存についての情報が多く記載されています。

著者の紹介

この本の著者は精神保健福祉士・社会福祉士で大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さんです。ソーシャルワーカーとしてアルコール・ギャンブル・薬物・摂食障害・虐待・DV・クレプトマニアなど様々な依存症治療に長く携わっていらっしゃいます。専門は加害者臨床で、「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいらっしゃいます。著書には『万引き依存症』、『「小児性愛」という病』などがあります。

本の構成(目次)

第1章 誤解だらけのセックス依存症
第2章 危険なセックスをやめられない人たち
第3章 「性的しらふ」を求めて
第4章 依存症当事者に聞く自助グループの内側
第5章 性依存症の背景にある社会問題
第6章 AV男優・森林原人と語るそもそも「性欲」とは何か?

本の内容

都内のクリニックで性依存症治療に関わる著者がセックス依存症について、その原因や実態、回復への取り組みなどを紹介しています。ここでいうセックス依存症とは、基本的に犯罪にならない合法的な性依存症のことを差します。専門家によって一般読者向けに書かれた本で、セックス依存症はもちろん、プロセス行為依存症についてとても分かりやすく書かれています。

基本的にはセックス依存症について書かれているのですが、プロセス行為依存の特徴を説明する際に、クレプトマニアが例に挙げられている場面も多く見られます。

第1章では、セックス依存になるのは性欲が強いからという問題ではないという観点から、人が行為依存にハマってしまうメカニズムを解説しています。第2章では実例を交えて、人がどのようにして依存行為にはまっていくのかが説明されています。第3章では依存症治療について、医療機関や自助グループについて書かれています。第4・5章では対談形式で自助グループについてや性依存症についての社会背景が書かれています。

依存症治療の専門家によって一般向けに書かれたもので、具体例が多く掲載されており、いずれの章も読みやすくわかりやすいものになっています。

わたしが読んで感じたこと

この本を読んで感じたのは、セックス依存症とクレプトマニアは依存行為に違いはあっても、根本的な部分はとても似ているということです。セックス依存にしても、窃盗依存(クレプトマニア)にしても、その行為に快感や快楽を求めている部分もありますが、それ以上に苦痛から逃れるために行っているんだということを改めて認識しました。

セックス依存症の治療について書かれている部分については、クレプトマニアからの回復についても当てはまる部分がたくさんあります。依存症からの回復の際によく言われる「底つき体験」や「スリップは回復のプロセス」ということについては、賛否が分かれる話題です。これらについても著者の臨床経験に基づいて書かれており、読んでいて納得できる部分が多くありました。

「おわりに」の章に書かれていた「弱さを知ることが、やめ続ける強さに変わる」という内容では、著者のソーシャルワーカーとしての体験談が書かれています。ここにも依存症からの回復のヒントがたくさんありました。そこに書かれた「自立している人ほど上手に他人に頼れる。」というのは依存症でない人でも当てはまることであり、「いきていくために大切なライフハック」です。依存症でない人でも、この本を読んで得られることはたくさんあると思います。

タイトルがタイトルなので手に取ることを躊躇ってしまう人もいるかと思いますが、プロセス行為依存のメカニズムを理解し、回復を目指していく上で有用な情報をたくさん得ることができます。依存症者本人だけでなく周囲の方にもおすすめできる1冊です。

書籍情報

著者:斉藤 章佳(精神保健福祉士・社会福祉士 大船榎本クリニック精神保健福祉部長)
出版社:幻冬舎 発行日:2020年11月 定価:\840+税

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