映画「PRISON CIRCLE」 仲間の大切さ・罪の意識を考える

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日本の刑務所への2年間の密着取材を基に作成されたドキュメンタリー映画「PRISON CIRCLE」。
その内容がとても印象に残ったのでご紹介します。

映画「PRISON CIRCLE」とは?

映画の舞台は島根県の「島根あさひ社会復帰促進センター(島根あさひ)」という、官民共同の新しい刑務所。
その中で行われている再犯防止プログラム「回復共同体(TC)」に2年間密着取材した、ドキュメンタリー映画です。

クレプトマニアであるわたしにとって、とても興味深い内容であり、短期間に2回観てしまいました。
もう一度見たい、そう思わせる内容でした。

TCユニットとは?

この映画は島根あさひ内の更生に特化したプログラムである、「TC(回復共同体)ユニット」を密着取材しています。

その内容はアリゾナ州のAmityというTCが開発したプログラムに由来しています。
徹底した語り合いを通じて、問題行動の原因となった心の問題にアプローチし、回復(再犯防止)につなげていくというもので、多くの依存症や問題を抱える人に応用されています。

TCユニットでは30~40名程度の受講生が半年~2年程度寝食を共にしながら、週12時間程度のプログラムを受けます。

刑務所内は基本的に私語は厳禁ですが、このユニットでは徹底した語り合いで自分自身の問題点と向き合います
受刑者同士のコミュニケーションを利用したものがプログラムの中心で、映画内では過去の経験の吐露、人間関係の図式化、加害者・被害者役に分かれてのロールプレイングなどが紹介されています 。
問題を抱える当事者(受刑者)が治療の主体となり、相互に影響を与え合うというのが、回復共同体です。

TCユニット出身者の刑務所への再入所率は他のユニットの半分以下という調査結果もあり、その再犯抑制効果に期待が高まっています。

4人の受刑者

この映画では主に4人の受刑者が紹介されています。

この4人は幼少期の貧困・いじめ・虐待・差別などの被害経験や家庭環境の問題により、何らかの心の問題を抱えています
そしてその問題点を心の内に秘め、その捌け口として犯罪に及んでしまったと考えられます。

心の問題点と向き合うことで、問題行動に頼らずに生きる方法を身に着けることを目指し、プログラムに取り組んでいきます。
2年間の取り組みを通じての心の変化が、映像を通して伝わってきます。

他人とのかかわりあいの中で自分の問題点と向き合う

4人はそれぞれ心の問題を抱えていますが、プログラム開始当初はそのような自覚は低いです。

心の問題は目に見えるものではなく、他人と比較することが難しいため、問題を抱えていることに気が付きにくいものです。
その結果、問題点を心の中に抱え込んでしまい、捌け口として問題行動につながることがあります
この4人はその問題行動が、犯罪でした。

自分自身の問題点と向き合うためには、本当の自分を表面化させることが大切です。
他人に伝えようと表面化することで、自分の感情と向き合うことができます。
映画の中では自分の幼少期の環境や親子関係、友人関係などを正直話したり図式化するなどして、外に出すことで、問題点してとらえ、改善を目指していく様子が描かれています。

他人の話に共感することで自分の内なる感情に気づいたり、他者とのコミュニケーションの中で新たな一面を引き出されたりと、相互関係を利用しながら気づきを得ていくのです。
それらは決して一人では得られない気付きであり、それこそが「回復共同体」の効果です。

2年間で参加者の心は大きく変化する

TCでの取り組みで、4人は自分の心の問題点と向き合います。
お互いに語り合い、心の内を外に出すことで、心には変化が起こります

被害者への罪の意識が持てなかった受刑者が、さまざまな対話やロールプレイングを通じて被害者の辛さを想像できるようになったり、今まで動くことのなかった感情が動くことが感じたりと、一人では決して得ることができないであろう変化を遂げていく様子が伝わってきます

映画内では受刑者の顔はぼかしが入っていて実際にはわからないのですが、その口ぶりからしても目つきや顔つきも大きく変化していることが想像できます。

当事者同士の語り合い・コミュニケーションの力

TCユニットでは支援員と呼ばれる指導者が入って、一緒にプログラムに取り組みますが、その指導員は答えを示すというような役割ではありません。
あくまでも進行役であり、基本は受刑者同士の語り合い・コミュニケーションです。

指導員はこのような回復プログラム運営のプロですので、声掛けや励ましなど、さすがと思わせる技術を持っており、受刑者の心の内をうまく引き出していきます。

そして、それ以上に重要な役割を果たしているのが受刑者同士です。
被害者役・加害者役に分かれてのロールプレイングで加害者役に厳しい指摘をしていたのは、受刑者です。
加害者役の受刑者が罪の意識について考えると同時に、被害者役の受刑者も被害者としての気付きを得ることができます。
同じように罪を犯した者同士でしか得られないような共感もあります。
回復を目指している者同士だからこそ言える、相手を思いやる厳しさがそこにはありました

今まで外に出すことのなかった心の内、葛藤や悩みを外に出し、他者の力を借りることで心が変化していくのです。

このような他者との語り合いを利用して生まれる心の変化が、再犯抑制に効果をあげています。
日本の多くの刑務所は今でも軍隊式規律が多く守られ、罰を与えて閉じ込めることで再犯を抑制しようとしていますが、再犯率は高いままです。

再犯防止、真の更生には心へのアプローチが大切だということだと思います。

回復には他人の力を借りることが有効

この映画を見て2つのことが印象に残りました。

ひとつは、自分の問題点を見つめなおすには他人の力を借りることが有効ということです。
自分自身と向き合い一人で考える時間も必要だと思いますが、悶々と悩んでいるだけではうまくいかない場合が多いように思います。
ひとつの共同体として仲間を巻き込みながら、一緒に回復を目指していくことがお互いにとって有用なんだなと強く感じました。

注目すべき「罪の意識」の変化

そしてもう一つが、罪の意識の変化です。

この映画では、受刑者の一人の罪の意識の変化がありありと伝わってきます。
プログラム開始当初は、被害者へ心を寄せることができなかった受刑者が、ロールプレイングを通して被害者と対話することで「被害者の辛さ」を考えられるようになります。
自分の犯した犯罪と被害者に向き合うことで、罪の意識が変化するのです。

わたしはこの「罪の意識の変化」がとても印象に残りました。
なぜなら、わたしも万引きがやめられなかったころは、万引きに対して罪の意識を持てずにいたからです。

「わたしが万引きしてもお店はつぶれないくらい儲かってるから、盗ってもいいだろう」、「どうせ売れ残ったら捨ててしまうんだから、盗ってもいいだろう」などと、自己正当化しながら万引きをしていました。
警察に捕まった時でさえ、お店の人に対して申し訳ないと思うことができませんでした。

入院や自助グループへの参加などを経て、今では「万引きは犯罪でありやってはいけない」という普通の人にとっては当たり前のことがわかるようになりました。
この当たり前のことがわかるようになったことが、万引きをやめられた大きな要因の一つだと感じています。

クレプトマニアの回復に必要なこと

TCユニットで行われているプログラムは依存症者や犯罪者など、心の問題を抱えた人に有用とされているものです。
犯罪行為に依存するクレプトマニアにも、この映画で取り上げられている自分の被害者体験など心の問題を外に出したり、罪の意識を持つための取り組みはとても有効だと考えられます。

映画の中では、このTCユニットを経て出所した人たちが定期的に集まる様子が紹介されています。
社会復帰した後もそのつながりを保ち続けることで、心の問題から回復し続けています

クレプトマニアの回復にも、正直に心の内を外に出せる仲間たちとつながり続けること、罪の意識を持てるようになることがとても重要なのではないでしょうか。

塀の向こうの彼らを見て

映画を見ながら、スクリーンに映る塀の向こうの彼らとわたしは、何が違うのかと考えてしまいました。
ただ捕まっていないだけで、犯罪を繰り返してきたことは同じなのです。

今の私にできることは自分の問題点と向き合い、回復し続ける努力をすることで万引きをしない日々を積み重ねることです。
そして、クレプトマニアについての情報発信を通じてクレプトマニアによる万引きを減らすことだと思っています。

これからも自分なりの贖罪を続けていきたいと思います。

映画「PRISON CIRCLE」公式ホームページ

思うことあれこれ

Posted by You Takahashi