正直になることで得られることはたくさんある

万引きを手放すために

正直になること、簡単なことではないですが得られるものはたくさんあります。行動での失敗や負の感情など、隠したくなることもなるべく正直に外に出すことが大切です。

こころが楽になる

わたしはしんどいとき、辛いこと・悲しいことなど負の感情はなるべく口に出さないようにしていました。耐え忍んでいたという感じでしょうか?ことばにして外に出してしまうと、それが反響し、増幅して跳ね返って来る気がしたからです。だから敢えて外に出さないようにしていました。これは行動に関してもそうです。悪いこと・恥ずかしいことなどをしても「バレなきゃいい」という考えから、隠していることが多くありました。今思えば、これは違ったなと思います。

わたしは万引きがやめられなかった頃、ずっと隠していました。いつか、どこかで正直にならなきゃいけない、そう思っていたのですがなかなか行動に移せませんでした。やっと行動に移せたのは入院した時です。ここで正直になれなきゃだめだ、そう思って意を決して話しました。そうしたら、仲間・主治医・家族に「よく言えたね」と言ってもらえました。誰かに話すと、受け止めてくれることが分かりました。反響して増幅するどころか、外に出せば解放されて楽になるということを経験しました。相手がいなければ書いて内にため込まないようにするだけでも、外に出して放り投げてしまえば跳ね返ってはこないんだと、行動に移してみて実感しました。

入院中に正直に話せたことはこちらに書いています。

問題と向き合うことができるようになる

正直ではないということは、嘘をついていること、そして本当のことを言わずに隠していることだと思います。嘘をついたり隠したりするときには、それを誤魔化したりないことにしようとしてしまうので、その事実ときちんと向き合うことは難しいです。難しいどころか、できないのではないかと思います。正直になることで問題と向き合っても、問題そのものが解決するとも限りません。でも逃げ回っていることへの後ろめたさは減り、こころが楽になることにより、きちんと問題と向き合うことができるようになると思います。

わたしは万引きがやめられないことをずっと隠していました。「盗っていないと嘘はついていない。隠しているだけ」、そんな言い訳でずっと誰にも本当のことは言わずに盗り続けていました。今となっては、嘘をつくことも、事実を隠し続けることも、正直でないという意味で良くないことだとわかります。そして正直に万引きしていたことを話したときは本当にしんどかったです。そしてそのしんどさを経験することで生まれる罪悪感がありました。もうあんなしんどさは経験したくないです。その思いは強い抑止力になっています。

車を擦ってしまったときのこと

先日仕事中、職場の車を運転していて縁石にボディをこすってキズをつけてしまいました。パッと見た感じではわからないくらいの目立たない場所・程度で、申告しなければ誰も気づかないかもしれないと思いました。その車はわたし以外の人も運転する車で、誰かがキズを見つけてもシレっとごまかすこともできそうだとも思いました。「黙っておけば、バレないかも?」そんな考えが頭をよぎりました。そこにはこすったことを隠したいという思いに加えて、運転が上手くない人と思われたくないという見栄っ張りな気持ちがありました。

でも、正直に申告することにしました。万引きを続けていた時に陥っていた「バレなきゃいい」の考え方を変えていく必要があると思ったからです。そして意を決して、上司に正直に申告しました。そうしたら上司は「ちゃんと報告してくれたし、このくらいなら報告書も書かなくていいよ。物損で良かった、今後は気を付けるんだよ」と言ってくれました。嫌な思いをすることはなく、むしろ正直に申告することで気持ちが楽になりました。隠していたら、「バレたくないな…」という嫌な気持ちを抱える状態が続いたと思います。そしてバレずに済んでしまったら、「隠しておけばバレない」というよくない成功体験を積んでしまい、更に隠し事をするという悪循環にはまってしまう可能性もあったと思います。失敗を正直に申告することで、気持ちを切り替えることができ、悪循環にはまることも防ぐことができました。

また、「(車を擦ってしまうような)運転がうまくない人」と思ってもらうことで、今後も粗相をしたときに言いやすくなったというのも正直に申告してよかったと思うことです。わたしの悪いクセに外面を気にして、「できる人キャラ」を演じたがるということがあります。嘘や隠し事をしてまで「できる人キャラ」を演じようとしてしまうのです。これは演じている期間が長くなればなるほど、正直さを失わせます。仮面をかぶった期間が長くなればなるほど仮面を取れなくなります。「え?あの人が…?」、そういう反応が怖くて、嘘にウソを塗り固めてしまうことがあるのです。今の職場は入職して約半年、早い段階で化けの皮が剥がれて「運転がうまくない人」に分類されてよかったです。

こうやって、一度正直になれると、その成功体験から正直さのスパイラルを作ることができるんだなと感じています。これは逆もしかりで、一度嘘や隠し事をしてしまうとそれを補うために更に嘘を重ねなくてはいけなくなります。そこにはまらないようにするためにも、早い段階で正直になれることがとても大切だと感じました。

失敗を隠さずに話したら、一緒に考えてくれた

失敗したことを正直に話せば、失敗の原因や解決方法を一緒に考えてもらえるというメリットもあります。同じ失敗を繰り返さないように客観的なアドバイスをもらうこともできます。失敗を隠そうとしてしまえば問題点と向き合うことは難しくなりがちですが、正直に話せば一人で悩むよりも意味のある失敗にできる可能性が高いです。誤魔化さずにちゃんと向き合うことで、失敗も糧にできるはずです。

先日のこと、ある失敗をしたときに正直に相手に伝えたところ、原因を一緒に考えてくれました。わたしは目の前の失敗について、その方法の問題点ばかりを考えていました。すると相手の人に失敗は結果論で、原因は別にあると指摘されました。 まさにその通りで、一人で抱え込んでいたらその問題に気付かず、また同じ失敗を繰り返してしまうところでした。

これはクレプトマニアの問題も同じだと思います。悶々と一人で悩んでいても、解決できる問題ではありません。それ以前に、隠そうとしていることで問題ときちんと向き合えていないことも多くあります。正直に、隠さずに外に出すことは回復に向けて必要不可欠だと思います。

行動についても気持ちについても正直に外に出す

この文章を書いたのは、また失敗や負の感情など、自分がかっこ悪いと思うこと・相手に迷惑をかけると思うことを隠したがるクセが出てきたからです。外面を気にしてしまい、行動や気持ちについて、かっこ悪いと思うことを抑え込もうとしてしまうのです。その原因に、正直に外に出したときの成功体験が少ないということがあると思います。そのため、正直になることの成功体験を文章にしたり、読み返したりすることで正直になることの大切さを繰り返し自分にしみこませ、スキルとして身に着けたいと思っています。

嘘をつかないということは以前よりだいぶできるようになってきたのですが、隠そうとするクセは本当に根強いです。負の感情については特にそうです。自分でも気が付かないうちに抑え込んでしまいがちです。行動については他人から指摘されることもありますが、負の感情などこころの問題については周囲の人は気づかないことも多くあります。その結果ストレスとしてため込んでしまい、依存行為で発散せざるを得なくなってしまうというのがよくないパターンです。行動でも気持ちでも、内にため込まずに自分から外に出すスキルを身に着けることが、依存症からの回復に向けて大きな力になるのではないかと思います。

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