依存行動のメカニズム こころの内圧を下げる

2020年8月4日

依存症の回復では、自分を偽らずに正直に語ることが大切と考えられています。
依存行動が起こるこころのメカニズムから、正直になることの大切さを考えてみます。

どのように依存行為が起こるのか?

依存行動がどのように起こるのか、こころの状況から考えてみます。

下の図はその人の内面(こころ)を表しており、円の外に出ているトゲはその人の行動の癖を表しています。
最も大きな癖が依存行動です。

その人の内面にある依存行動の衝動にスイッチが入ると、依存行動が起きます。
依存症が進行すると、衝動と依存行動のつながりは強固なものになり、衝動が起こると自動的に依存行動が起きるようになってしまいます。
こうなると自分で行動をコントロールすることが非常に難しくなります。

衝動にスイッチを入れるには、衝動を刺激するものが必要になります。
外部からの刺激でスイッチが入ることもありますが、重要なのはその人の内面で発生するストレスや葛藤などです。

嫌な気持ちを押し殺そうとしたり、考えると辛いので内面に押し込めたりすると、抑圧された感情が募りこころの内側の圧力が高まっていきます
これらの処理ができない感情が一定量以上たまり、内圧が強まってしまうと衝動にスイッチが入り、依存行動を起こしてしまうと考えられます。

依存行動は、快楽や興奮などを求めて行うという単純なものではなく、なんとかしてこころの内圧を下げることで、こころを維持しようとするメカニズムとも言えます。

叱責や罰は効果がない

窃盗行為をやめさせるために、周囲から叱責や説教をすることが考えられますが、これらは効果が期待できません。
なぜなら、叱責や説教などにより外からの圧力がかかることで、その人の内面には更なるストレスや葛藤が生じるからです。
外からの圧力が高まれば高まるほど、こころの内圧は高まります。
その結果、衝動にスイッチが入りやすくなり依存行動が繰り返されるという悪い循環が強化されてしまうと考えられます。

叱責や罰に効果がないというのは、自分自身に対しても同様のことが言えます。
「やめよう」、「やめなければ」と自分自身に矛先を向け、責めれば責めるほど、依存行為をしてしまった時に自責の念や罪悪感が高まり、内面には更なるストレスや葛藤が生まれます
(ここでいう罪悪感とは「依存行為をやめられないこと」に対する罪悪感であり、「窃盗行為」そのものに対する罪悪感ではないことが多いと思います)

依存行為がやめられないことで、「自分はなんてダメな人間なんだ…」という自己否定や自己嫌悪のエネルギーがますます大きくなります
その結果、こころの内圧が高まってしまい行為衝動のスイッチが入りやすくなるという悪循環にはまってしまいます。

どうやって、こころの内圧を下げるか?

こころの内圧を下げるには、「外からの圧力を減らす」、「内圧を高める要因を減らす」、「別の排水路を作る」という方法が考えられます。

外からの圧力を減らすために、家族や周囲の人からの叱責や説教は少ないに越したことはありません。
依存行為に走ってしまうメカニズムを理解し、叱責や説教を減らすことが望ましいです。

それと同時に「内圧を高める要因を減らす」こと、つまりストレスや葛藤を減らすことも必要になります。

クレプトマニアの場合で考えてみます。
クレプトマニアは「プロセスへの依存(行為依存)」であり、周囲が気づきにくいという特長があります。
また、犯罪行為であるがゆえに、依存行為を行っていることを隠してしまいがちです。
さらに、小学生でもわかるような社会的ルールが守れないという後ろめたさが強いです。
そのため、外部からの叱責や説教などの外圧よりも、万引きを止められないことに対する自責の念、つまり内圧が高まることの影響が大きいと考えられます。

「自分はなんてダメな人間なんだ…」という自己否定や自己嫌悪のエネルギーを減らすためにおすすめの方法が、「基準を変える」方法です。

詳しくはこちらに書いています。

大事なのは依存行為に代わる排水路を作ること

そして、最も大事なのが「別の排水路を作る」ということです。

こころの内圧を下げるために依存行為を行っているわけですから、依存行為を手放せば、その排水路を失うことになります。
依存行為を手放したことで、自責の念や後ろめたさが減り内圧は下がりますが、依存行為をガマンするという新たなストレスが生まれることも十分に考えられます
依存行為を手放して時間が経過するにつれて、自責の念や後ろめたさからの開放感は徐々に薄れ、依存行為をガマンするストレスが強くなっていく可能性も高いです。

そこで大事になってくるのが、依存行為に代わる新たな排水路を作ることです。
こころに排水路を作り、そこからストレスや抑圧された感情などを外に出すことが重要になります。

こころの中にたまったストレス、感情を外に出すためには一人で何とかするには限界があります。
一人で何とかしようと、周囲にバレないようにしながらいろんな努力をしている人も多いと思います。
また、バレない方がいい、隠している方が楽と思っていることも多いでしょう。
しかし、隠していることの後ろめたさがストレスになり、さらに依存行為を悪化させている可能性もあります

こころの新たな排水路を作るのは1人では困難です、誰かに助けを求めましょう
具体的には、ストレスを感じていることや葛藤、こころの中に抑え込んでいた感情を正直に吐き出し、誰かに聞いてもらうことが大切です。
もっとも言いにくいような、隠しておきたいことを誰かに話せると、こころの内圧を大きく下げることができます。

そのためには、話を聞いて、それを批判せずに受け止めてくれる相手や場所が必要になります。

正直に話せる環境を作る

身近な存在である家族がよき理解者となり、話を聞いてもらえるのが理想的ですが、なかなか簡単にいかないことも多いです。
依存症に詳しい専門家や自助グループにつながることが一番良い方法だと思います。

自助グループでは同じ悩みを抱える者が集まるので、その悩みを恥じる必要はありません。
また、ミーティングは原則的に「言いっぱなし、聞きっぱなし」なので批判されたり、評価されたりすることがありません。
そのため、自助グループなどの仲間とのつながりは正直に話すにはもってこいの環境と言えます。

大事なのは正直になること

いくら正直に話しやすい環境が整っても、自分が行動しないと変わりません。
扉が開いていても、外から手招きされても、そこに歩みを進めるかどうかは本人の行動次第です。

クレプトマニアの依存行為は犯罪行為ということもあり、依存行為の事実を話すのはかなりしんどいです。
また、自分の気持ちや感情を偽らずに、正直に話すのにはとても勇気が必要です。
できるならバレたくない、認めたくない、隠し通したいなどなどいろんな思いがあります。
そして、小学生でもわかるような「盗ってはいけない」というルールを守れていないことへの、恥ずかしさもあると思います。
この思いは特にお子さんを持つ方に強いように感じます。

わたし自身も、なかなか正直に万引きしていることを話すことができませんでした。
でも、一度勇気をもって正直に話してみると、正直になった方がずっと楽だということがわかりました
そして、一度話始めると自分でも気が付いていなかった、抑え込んでいた感情があふれ出てくる感覚があり、どんどんと外に出せるようになりました

1人で抱え込むには限界があります。
自分を偽らず、自分の気持ちに正直になり、思いを外に出すことが大切です。

話を聞いて自分の感情に気が付くこともある

自助グループなどで同じ悩みを持つ仲間とつながることを勧める理由に、「仲間の話を聞くことができる」というのがあります。
同じような悩みを抱える仲間の話を聞くことで、自分でも気づいていなかった思いや感情に気が付くことがあります
仲間の力を利用して、抑え込んでいた感情の蓋を開けることができる感覚です。

そして、出てきた感情を口にすることで、こころの内圧を下げることができます。

依存行為をガマンするだけでは回復できない

依存行為は高まったこころの内圧を下げるための行為なので、ただ抑え込むだけではガマンに限界があります。

依存行為に頼らずにこころの内圧を下げるためにも、自分を偽らずに正直に話すことは大切です。
最初の一歩はとても勇気がいりますが、正直に話すことの良さを経験すると、その効果を実感できると思います。

自分を偽らずに、正直に話せるようになることが盗らない一日を積み重ねるための大きな一歩になることは間違いありません。

関連する項目はこちらです。