効果が感じられないときの考え方
回復に向けての取り組みはすぐに効果が感じられるものではありません。取り組みを続けていても、症状が悪化してしまうことも十分にあり得ます。
依存症対策の効果はすぐに出るものではない
クレプトマニアなどの依存症には特効薬はありません。通院やカウンセリングや自助グループへの参加、正直に話すなどいろんな対策がありますが、いずれの方法でもすぐに効果が感じられるものではないです。
諦めてやめてしまったら、そこで終わってしまいます。効果が感じられないときに、諦めずに取り組みを続けることが重要です。
万引きはやめられなかったけど、対策は続けていた
わたしは万引きをするようになってから、約10か月後に通院と自助グループへの参加を始めました。そこから入院まで約10か月間、通院と自助グループへの参加を継続しましたが、毎日のように万引きをする生活はやめられませんでした。むしろ、万引きのことが頭から離れなくなり、盗る量も増えていましたので症状としては悪くなっていたと思います。それでもこの2つをやめてしまったら、それこそどうしようもなくなると思い、なんとかしがみついていました。
今考えてみると、この2つを続けていたことが今の盗らない生活につながっていると思います。通院も自助グループへの参加も続けていなかったら、今頃どうなっていただろうと思うとぞっとします。
高齢者リハビリの経験
症状がひどくなる中でもわたしが通院と自助グループへの参加を続けられたのは、「続けているからこの程度で済んでいる」、「やめたらもっとひどくなる」と思うようにしていたからです。
わたしは介護関係の仕事をしていたことがあり、高齢者がリハビリを行う様子をよく目にしていました。高齢者の多くは加齢とともに体力や運動能力が低下し、だんだんと歩けなくなってしまいます。そこで歩行能力を維持するために、歩行練習や筋力トレーニングなどのリハビリを行います。
しかし、いくら頑張っても加齢変化には勝てないのが現実、リハビリを行って改善や現状維持ができる人もいますが、多くの人は段々と歩けなくなってしまいます。頑張ってリハビリをしても段々と歩けなくなっていくのですから、その効果を疑うのは当然です。効果を感じられないものにやる気を保つのは大変です。そんな時は、「リハビリを頑張っているから、この程度の衰えで済んでいるんですよ。ここでリハビリをやめてしまったら、もっと急激に、坂道を転げ落ちるように歩けなくなてしまいますよ。」という話をしていました。
これは依存症治療の取り組みにも同じことが言えると思います。盗りたいという気持ちは簡単になくなるものではありません。また、取り組みを続けても依存行為が止まらないこともあります。でも、取り組みを続けているから、その程度で済んでいるのだと思うのです。やめてしまったら、もっとひどくなることは想像に難くありません。
回復の取り組みは予防接種みたいなもの
効果が感じられないときの考え方として、「通院や自助グループへの参加などの回復の取り組みは予防接種みたいなもの」と考えるのもよいと思います。副反応は殆どない予防接種です。
つまり「接種してもわかりやすい効果は感じられない」、「接種しても罹る人もいるし、接種しなくても罹らない人もいるが、接種しておけば罹りにくいし、罹っても重症化しにくい」、「接種しないで罹れば、”接種しておけばよかった…”と後悔することになる」、「続けていればやっておいてよかったという日が来る」こんな感じです。
後になって「やっておけばよかった…」と思うのか、「やっておいてよかった!」と思うのか、それは本人の行動次第です。後悔しない選択をする、それが大切だと思います。
続けることが大切
依存症への対策は、今日始めて明日結果が出るというようなものではありません。また、検査で数値が変化するというようなわかりやすいものでもありません。効果が感じられないときに、その取り組みを続けるのはとても大変です。一度中断してしまったものを再開するのはもっともっと大変です。効果が感じられなくても、「続けているからこの程度で済んでいるんだ」と考え、何とか続けていればその後に大きな変化が訪れることが多いのです。「慌てず・焦らず・諦めず」、こつこつ継続できればいずれ結果はついてくるはずです。
依存症対策の効果のあらわれ方は「成功曲線」をイメージするとわかりやすいです。成功曲線についてはこちらのページで書いています。
効果のあらわれ方は人それぞれ
対策に効果が感じられず不安なときなどは、先行く仲間の経験談を聞くことはとても参考になります。同じ経験をしている人の話はとても説得力があります。でもそれはあくまでも他人の場合です。効果のあらわれ方は人それぞれ、効果が表れる程度もタイミングも違います。他の人と比較してしまうと、不安になってしまいがちです。同じクレプトマニアであっても原因も違えば、症状も違います。同じ取り組みを行っても、その効果は異なります。いろんな意見に耳を傾け、他の人の取り組みを参考にすることは良いと思いますが、その効果を比較するのはナンセンスです。
特に感じやすいのは焦りだと思います。窃盗がやめられない渦中だったり、窃盗衝動と戦いながら盗らない生活を送っているようであれば、「盗りたい欲求も起こらなくなっている今の生活はとてもいい!」という先行く仲間の話を聞けば、焦りも感じるでしょう。でも、多くの場合その段階に至るまでにはそれなりに時間がかかっています。5年・10年といった長期間の取り組みでの効果を10分で聞けたりもします。話で聞くと凝縮されていますが、そこには地道な取り組みがあることがほとんどです。そこは頭に入れておいた方がよいと思います。かといって、地道な取り組みの間がずっと苦しいわけでもありません。少しずつ、回復していく。続けていれば、効果は表れるはずです。
依存症対策はすぐに効果が出るものではありません。回復の変化は年単位、そのくらいの表現をします。そして完治はなく、一生回復し続ける必要があります。他の人の経験や意見を参考にしながら、腰を据えて取り組むことが有効なのではないでしょうか。
関連する項目はこちらです。
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