クレプトマニアに多い認知の歪み
認知の歪みは「依存症に見られる考え方の特徴、思考パターン」とされています。クレプトマニアにありがちな認知の歪みをご紹介していきます。
認知の歪みとは?
「認知の歪みがある」というのは「ものの見方や感じ方が歪んでいる」状態、偏った考え方を持っている状態です。
大森榎本クリニックの精神保健福祉士である斎藤章佳氏はその著書の中で、「認知の歪み」を「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」であると定義しています。簡単に言えば「言い訳材料」や「自己正当化理論」みたいなものだと思います。
クレプトマニアはいわゆる「普通の人」が多い
クレプトマニアになっている人は万引きなどの窃盗行為を繰り返してしまいますが、「極悪人」というわけではありません。窃盗行為をしてしまうこと以外に関しては「普通の人」です。これは依存症全般に言われていることなのですが、責任感や正義感が強い人が多いとされています。
つまり、人格が破綻しているわけではないのですが、「ものを盗まない」ということだけができない状況になってしまっています。
悪いと思いながら続けるのはしんどい
クレプトマニアでも「盗みをやめなきゃいけない」と思っていることは多いです。「やめたい」と思えているかというと、そうではないこともありますが「やめなきゃまずい」とは思っていることが多いです。自分では「悪いこと」と思えていなくても、「世の中的には悪いこと、犯罪行為である」だということは重々承知しています。
悪いとわかっていることを続けるので、それなりにしんどくなります。捕まることに対する不安もあります。盗るときのスリルを楽しんでいる一方で、やはり精神的にはしんどいのです。その結果、悪いことである盗みを正当化する「言い訳材料」が必要になります。
そこで出てくるのが、クレプトマニア特有の認知の歪みです。盗みをすることの「言い訳材料」であり、「自己正当化理論」です。
盗みを正当化する理論
具体的にはこんな感じです。
・レジが並んでいて時間がなかったから、レジを通らずにお店を出た
・こんなにたくさん買っているんだから、一つくらい万引きしてもいいだろう
・万引きされやすいレイアウトにしているお店が悪い
・自分はこんなに頑張っているのに報われないんだから、少しくらい万引きしてもいいだろう
・ほかにも万引きしている人がいるんだから、わたしも万引きしてもいいだろう
盗らない生活をしている今では、「これはダメでしょ」と思えますが、クレプトマニア同士での会話ではとても共感を生む内容です。わたしが初めてクレプトマニアのこのような思考パターンを知った時、「あー、わかる」と思いました。そのころは万引きはしていなかったのですが、摂食障害だったこともありクレプトマニアに近づいているなと実感しました。
矛盾する考えによる苦しさ
一方で、この考え方はおかしいとも思っていました。矛盾しているようですが、冷静になれればおかしいとわかります。万引きをしたものを持って帰宅して一息つくと、「あー何やってるんだろう…」と思ったりもしました。でもスイッチが入ると、万引きを正当化する歪んだ認知が頭の中で炸裂するのです。炸裂してしまうと、制御不能になってしまいます。自己正当化理論で自分を納得させて万引きを続けていました。
また、捕まることに対する不安もあるのですが、「盗らねばならない」という強迫的な思考になってしまうので、その不安に打ち勝とうとしてしまいます。「絶対失敗しないから」などと自分を鼓舞し、奮い立たせるようにして万引きをすることもありました。
常に「自分は悪くない」と思えていたらむしろ楽なのかもしれません。盗みはやってはいけないこと・やめなきゃいけないとはわかっているのに、やめられないし、やめたいと思えていないんです。この矛盾する感情が、クレプトマニアの苦しさを生み出す一つの要因なのだろうと思います。
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