基準を変えて、自分をほめる

万引きを手放すために

クレプトマニアには自己肯定感が低い人が多いです。自己肯定感の低さを改善するために、自分で自分をほめる工夫をするとよいと思います。

自分で自分の機嫌をとる

自己肯定感の低さを改善するためには、ほめられることが効果的です。他人からほめられるのがいいのはもちろんですが、いつもほめてくれる人がいるとは限りません。

それならば、自分で自分をほめましょう!そうやって「自分で自分の気持ちを高める」、「自分の機嫌は自分でとる」ということができるようになるとよいと思います。

ほめるために基準を変える

自分をほめるためにおすすめの方法が、基準を変えるという方法です。

天気を例に考えてみます。「晴れが普通」と考えると、「雨は残念」と思ってしまいますが、「雨が普通」と思えば「晴れはうれしい!」と思えるようになります。同じ現象でも基準を変えて前向きにとらえることで、自分をほめる材料にすることができます

万引きなどの窃盗行為は、しないのが当たり前です。でも万引きがやめられない状態の人にとっては、万引きをガマンするのは大変なことです。ここで「万引きする生活が普通」と普通の基準を変えてみましょう。情けないという思いはあるかもしれませんが、そこは受け入れるしかありません。万引きしてしまうことが普通になってしまっているのだから、ガマンできたことは頑張った結果。つまりほめるに値することなんです。

また、盗ってしまっても、それは「普通」、必要以上に自分を責めないようにしましょう。盗ったことで自分を過剰に責めることは、更なるストレスを生み、そのストレスが行為欲求を高めてしまうという悪循環にはまってしまいがちです。せっかく頑張っているのですから、「何でそんなことが、頑張らないとできないんだろう…」と自分を卑下するのではなくて、 頑張ってできたことをほめてあげましょう。

夜、家に帰ったら一日を振り返ってみます。その日一日、盗らずに過ごすことができたら、「よく頑張った!」と自分をほめてあげましょう。そうやって自分で自分の機嫌をとって、盗らない一日を積み重ねていくためのモチベーションを高めていけるとよいのではないでしょうか。

できていることに目を向ける

テストの点数に例えてみます。

100点満点のテストで70点を取れた場合、「70点も取れた!」と思うか、「70点しか取れなかった」・「30点分も間違えてしまった…」と思うかで全然気持ちが違ってきます。

万引きはしないようになったが、お店で「これなら盗れるかも?」、「盗りたいな」と思ってしまい、何とかガマンしてお店を出た、そんなこともあり得ます。こういう場合、「盗りたい気持ちが湧いた」ことをネガティブにとらえるのではなく、「盗りたくなったけど盗らずに済んだ」ことをポジティブにとらえられるとよいと思います。さらに、「盗りたい」と思った経験を踏まえて、「なぜ盗りたいと思ってしまったか?」、「盗りたい気持ちが湧かないようにするにはどうすればよいか」などと考えを深めていければ、どんどんと盗らない生活につなげていくことができます。

友人をほめるつもりで自分をほめる

他者が同じことをしていたらほめてあげられるのに、自分のこととなると途端に厳しくなってしまう」、このようなダブルスタンダードになっていることも多いと思います。例えば体調不良、他者が体調を崩しているときには「無理しなくていいんだよ」と声をかけてあげられるのに、自分の場合だと「こんなことで休んではダメだ」と無理してしまう。自分に優しくすることが苦手だったりします。このような場合でも一歩引いて、自分を友人だと思って捉えてみると自分自身にかけることばが違ってくることもあると思います。そう考えると、できて当たり前というようなことでも十分に褒めるに値することもあるのではないでしょうか?

期待値を下げる

基準を変えるというのは「期待値を下げる」ということに言い換えられると思います。良い意味で相手に期待しない、それだけでだいぶ違います。期待値が高いと「このくらいはできるはず」などと考えるので、それが叶わなかったときに減点方式で考えてしまいがちです。期待値を下げると、加点方式で見ることができます。先ほどのテストの点数で考えると、75点を取った場合、期待値を90点にしていると「期待していたのよりも15点も低い」とマイナスに感じてしまいます。でも期待値を下げて60点にしておくと「期待していたよりも15点もとれた!」と受け取ることができます。自分にも相手にも「期待しない」、このくらいの方が上手くいく気がします。

周囲の人にほめてもらう

自分で自分をほめるだけでなく、他人にほめてもらうこともとてもいいことです。さらに前向きな気持ちになれます。逆に、正直に伝えてもそれを怒られるなど否定されてしまうと、次の時には隠そうとしてしまいがちです。これは依存症からの回復を目指す上でとてもよくないことです。そこで、身近な人にも基準を変えることをお願いしましょう。「万引きすることやそれを隠してしまうことが当たり前だから(だったから)、盗らないでガマンできた時はほめてほしい。そして万引きしてしまったことを正直に話したときは怒らないでほしい」と、正直に伝えられるととても良いと思います。

わたしは両親に先に書いたように基準を変えてもらうことをお願いしました。そして、「今日も盗らなかったよ」と報告することで、ほめてもらえるという環境を作っています。また、両親の方から「今日も盗ってないよね??」などと冗談ぽく話してくれることもあります。人によっては「なんで信じてくれないの?」と思ってしまうかもしれませんが、わたしの場合は逆です。わたしがクレプトマニアであり、ちゃんと買うことのできる生活が当たり前ではないと感じられること、これは盗らない生活を積み重ねることに非常に役立っていると感じます。

このように両親がわたしのことを腫物扱いすることなく、クレプトマニアの話題について触れてくれることで、もしまた万引きをしてしまったとしても、正直に話しやすい環境になっていると感じます。このことで、もしスリップ(単発の失敗)をしてしまってもすぐに正直に話せれば、そこで引き返すことができ、万引きがやめられない生活に戻ること(再発)はないはずと、再発への不安が減りました。協力してくれている両親には、本当に感謝感謝です。

そんなことをお願いするのは情けない、気が引けると感じることもあると思いますが背に腹は代えられません。勇気を出して、行動することをおすすめします。

疑われているわけではない

家族など周囲の人に「万引きしてない?ちゃんと買ってる?」などと言われると「疑われている」と感じてしまい、負の感情が高めてしまうこともあります。でもそれを「心配してくれている」と捉えると感じ方が変わると思います。クレプトマニアにとって窃盗行為は病気の症状です。周囲の人は症状が出ていないかを心配してくれているのだと思います。膝に持病がある人と長時間歩いた時に、「膝痛くなってない?」と心配してくれているのと同じです。「疑われているのではない、心配してくれているんだ」、そう思えると負の感情を高めずに済むのではないでしょうか?

ほめられていることを素直に受け取る

どんなにほめてもらっても、それを素直に受け取れないとうまくいきません。自分をほめることが苦手だと受け取ることも苦手になりがちだと感じます。「そんなことはないです」や「そこはいいかもしれないけど、こっちはダメなのでほめられるほどのことではありません」などとせっかくほめられても謙遜というか、自己卑下してしまい、投げてもらったボールをうまくキャッチできないことも多いと感じます。

ここは「ほめていただき、ありがとうございます」と素直に受け取り、喜ぶことを意識するとよいと思います。わたしもこの「素直に受け取る」というのが本当に苦手です。表面上は「ありがとう」と言えても、内心では「そんなことない」と思ってしまったり。それでも、声に出して「ありがとうございます」と言い続けることで少しずつ変わってきているように感じています。

せっかくほめてもらっているのにそれを受け取らないのは、相手を否定しているとも言えます。相手の思いを否定しないためにも、素直に受け取ることが大切だと思います。

続けられていることをほめる

盗らない日々を積み重ねるのは、簡単なことではありません。盗らずにいられている期間をカウントすることで、達成感を味わえるようにするのもおすすめです。

ほめてもらうためにSNSを利用する

わたしは盗らない一日を過ごすことができたら、自分をほめる言葉をX(旧Twitter)に投稿することがあります。そうするとそのツイートをみた人が「いいね!」してくれたりして、さらにやる気が高まります。

X(旧Twitter)ではいろんな依存症の人がお互いに応援しあっているんです。依存症対策専用アカウントを作って頑張っている人が多くいます。これを利用しない手はありません。   
ぜひフォローしてください!フォローバックします!  高橋悠のアカウントはこちら 

SNSの活用についてはこちらにも書いています。

盗らなきゃ損!の基準も変える

クレプトマニアには損得勘定の強い人が多く、いろんなことを損得で考えてしまいがちです。そして、万引きがやめられない状態になると、「万引きすればお金を払わずに済んだのに…」という思いから、「お金を払って買うと損した気分になる」など、「盗るのが当たり前」・「盗らないのは損」という考えに陥ってしまうことがあります。

この間違った基準も変えなくてはいけません。お金を払って買うのは当たり前です。モノを買った結果、お金が減るのは当たり前です。それは損ではなく、必要経費です。盗って得することはないです。長い目で見て損をします。

関連する項目はこちらです。

損しているのではなく、得をしていない

わたしは買い物で、支払いに電子マネーやスマホ決済を使いポイントを貯める、いわゆる「ポイ活」をやっていて、お店やキャンペーンの実施状況などにより使い分けています。そうすると、うっかりポイントを付け忘れたり、違う方法で払った方がポイントが多かったなんてことが起こります。そんなときには「あ、ポイントを損した!」と思ってしまいがちです。

でも、よく考えてみればこれは損ではないですよね。ポイントはあくまでおまけ、だからポイントはつかないのが普通で、ポイントがもらえることで得をしているのです。だから、ポイントを付け忘れたり少なかったりするのは、「損をしているのではなく、得をしていない」ということです。マイナスなのではなく、プラスがなかっただけです。

これは割引商品についても同じようなことが言えます。枯渇恐怖が強いクレプトマニアには、ちゃんと買えるようになっても割引商品が大好きな人が多いです。そして割引商品を買うのが当たり前になっていると、通常価格で買うことを「損をしている」と感じてしまうことがあります。でも、よく考えてみれば通常価格で買うのが当たり前で、割引品は得をしているわけです。つまり、通常価格で買うのは「損をしているのではなく、得をしていない」だけです。

このような「損した!」という感情を抱くことは、損得勘定が強いことが多いクレプトマニアにとっては、万引きに走りやすくなる状況であり、なるべく抱きたくない感情です。これも基準を変え受け止め方を変えることで、少なくすることができると思います。

「盗らないこと」に達成感を得られるようになる

基準を変えて、盗らないことをほめられるようになれば、盗らないことで達成感や満足感を得られるようになります。この変化は本当に意味のあることです。

クレプトマニアは窃盗行為に達成感や満足感を得るという依存症です。達成感や満足感が足りないから、窃盗をしてしまうともいえると思います。それが、盗らないことで達成感や満足感を得られるようになれば、窃盗行為に走らざるを得なくなる理由が減り、さらに盗らない生活を送りやすくなるという好循環を引き起こすことができます。

盗らない生活を積み重ねていくためにも、基準を変えて自分をほめる習慣をつけることはとても有効です。ぜひ意識してみてください。