クロスアディクションとは?

クレプトマニアとは?

クロスアディクションとは、一人の人が複数のアディクション(嗜癖)を持っている状態のことを言います。

アディクションって?

アディクションは日本語だと嗜癖(しへき)と言います。嗜癖とは、「ある習慣への耽溺(たんでき)」という意味で、ある対象におぼれてしまう状態です。本人や周囲の人に都合の悪いことが起きているのに、その習慣にとらわれてしまい止められない状態を意味します。 ある行為や物質などに「はまって」いて、「わかっちゃいるけどやめられない」状態です。

クレプトマニアのアディクションは「窃盗」、アルコール依存症のアディクションは「飲酒」となります。

「依存症」と「アディクション」は似たような意味を持っていますが、微妙にニュアンスが異なります。「依存症」はどちらかというとアディクションにはまっている「状態」をさすのに対し、「アディクション」はその「行動」面に重点を置いた表現と言えます。また、「アディクション」の重症例が病気である「依存症」であるとされ、「アディクション」は軽症例も含まれた広い概念で使用されます。

複数のアディクションを持つのがクロスアディクション

クロスアディクションとは、一人の人が同時に2つ以上のアディクションを持つことです。依存症の人には「アルコール依存と摂食障害」、「摂食障害とクレプトマニア」というようにクロスアディクションの人が少なくありません。というのも、アルコール依存・薬物依存・クレプトマニアなどの依存症は、アディクションは違っても不安や焦り、空虚感といった心理的な要因が根本にあり、同じようなメカニズムで発症していることが多いからです。

風邪で例えてみましょう。「身体が弱っているときに、寒いところにいた」という原因があり、それに対し「発熱」、「鼻水」、「咳」などの症状があります。この症状の一つ一つが「アディクション」であり、鼻水と咳が同時に症状として合われたのが「クロスアディクション」という具合です。

また、時間をずらして摂食障害からアルコールに、アルコールから薬物にといったようにアディクションが次々と変化しながら依存症状が続くこともあります

クレプトマニアは摂食障害とのクロスアディクションが多い

クレプトマニアにもクロスアディクションの人は少なくありません。とりわけ、摂食障害との合併例が多いとされています。

詳しくはこちらに書いています。

摂食障害のほかにも以外にもアルコール依存症やギャンブル依存症とクレプトマニアのクロスアディクションの例もあります。「お酒を買うお金がないから万引きをしていたが、次第に万引き行為そのものに依存するようになってしまった」、「ギャンブル代を捻出するために万引きをするようになり、次第に万引き行為そのものに満足感・達成感を求めるようになってしまった」などというものです。

どのアディクションを手放すべきか?

摂食障害とクレプトマニアなど、複数のアディクションを持つとき、何を優先して手放すべきなのでしょうか?
そもそも、どちらかを優先して手放すという考え方自体がよくないのでしょうか?

ここで「お酒」と「たばこ」を例に考えてみます。「お酒」・「たばこ」両方をたしなむ状態がクロスアディクションの状態です。これらを手放そうと考えた場合、一番良いのは同時に2つともやめるということです。でも「いきなり酒もたばこもやめるなんて、そんなの我慢できない!」ということもあります。「とりあえずたばこはやめるけど、お酒は続ける」という選択もあるでしょう。

クレプトマニアを含むクロスアディクションの場合、やはり窃盗行為をやめることを最優先に考えるべきだと思います。というのも、窃盗行為は被害者を生む犯罪であり、依存している本人にとってもリスクが高いからです。そして、犯罪行為を行っているという罪悪感による心理的負担も大きいです。

一つのアディクションを手放した結果、他のアディクションがひどくなったり、違うアディクションに走ることも十分に考えられると思います。お酒とたばこの例でいうと、たばこを止めたらお酒の量が増えたり、口さみしさからアメをなめるようになったりといった具合です。そのようなリスクはありますが、やはり窃盗行為を優先的に手放すべきだと考えます。

すべてのアディクションを手放す努力が必要

アディクションが一つでも複数でも、依存先が複数あるかどうかの違いであって根本の原因は同じです。一つのアディクションがあるということは、依存症の原因があるということであり、クロスアディクションに移行する可能性も高いです。

クレプトマニアを含むクロスアディクションで、窃盗行為を手放すことを優先しコントロールできるようになったら、やはり残るアディクションを手放す努力をすべきと言えると思います。それは根本の原因と向き合うことにつながるからです。

摂食障害(過食嘔吐)とクレプトマニアのクロスアディクションの人は多く、(過食嘔吐に使う)食べ物だけを万引きするという人も多いです。この場合、摂食障害(過食嘔吐)を手放すことができれば万引きをする理由も少なくなります。逆に言えば、万引きを手放すことができても摂食障害(過食嘔吐)が残っていれば、再び万引きをしてしまうリスクが高い状態と言えます。これは依存症の根本原因の改善には至っていない状態です。

やはり最終的にはすべてのアディクションを手放す努力、つまり依存行為に走ってしまう根本の原因と向き合うことが必要なのでしょう。

クレプトマニアに多い摂食障害との合併についてはこちらにも書いています。

クロスアディクションに関する私の体験はこちらです。