HALTとは? 依存行為に走りやすくなる状況

クレプトマニアとは?

HALTとはストレスがたまり依存行為に走りやすくなる状況の頭文字をとった造語です。「HALTに気をつけろ!」というような使い方をします。

HALTとは?

HALT(ハルト)とは次の4つの単語の頭文字をとったものです。

・H…hunger(空腹)

・A…anger(怒り)

・L…loneliness(孤独)

・T…tired(疲労)

これらの要因が高まると、依存行為への欲求が高まります。つまり、盗りたくなる可能性が高いということです。逆に言えば、このような場面にならないように気を付けることで窃盗に走る可能性を減らすことができます。

Hunger(空腹)

空腹は血糖値が下がっている状態であり、生理的な飢餓感が高い状態です。飢餓感とは「満たされない感覚」と考えるとわかりやすいと思います。

クレプトマニアなどの依存症患者は承認欲求が強いなど、「満たされない感覚」が強い人が多いです。それに空腹による生理的な飢餓感が加わることで、満たされない感覚がさらに強くなります。それが「盗りたい」という欲求を高めることにつながってしまいます。盗りたいという欲求が高い状態でお店に行くことは、万引きのリスクを高めます。また、「盗った」ことによって空腹感が満たされたという経験は、「盗る=満たされる」という経験を刷り込むこととなり、盗りたいという欲求をさらに高めるという状況に陥ります。つまり、窃盗行為のループを強化してしまうのです。

「HALT」のHは、ときにHappyのHと言われることがあります。ものごとがうまくいっているときや良いことがあった時など、気分が高揚しているとき調子に乗っているときにも注意が必要です。どこか許されたような気分になり、気持ちが大きくなってしまいがちです。その高揚感が「ちょっとくらい盗ってもいいだろう」という誘惑を引き起こしやすいのです。

Anger(怒り)

怒りはストレスとしては強いとされており、その捌け口として盗りたい気持ちにつながりやすいと考えられています。

「怒り」が湧いているときには、脳内の神経伝達物質が過剰に分泌されています。その神経伝達物質は人の活動の源となるノルアドレナリンで、起床後に分泌されることで活動性を高める働きをします。「怒り」はなくしたい感情ですが、極端にノルアドレナリンの分泌を抑えると活動のエネルギーが低下してしまい、やる気に影響が出てしまいます。また怒りや悲しみといったマイナスの感情を感じないようにすると、喜びや期待感などのプラスの感情も感じにくくなると言われています。そのため、「怒り」の感情は抑えるのではなく、どのように発散するのかを考えた方が良いとされています。「怒り」の感情があることを認め、それを発散する方法を身に着けられるとよいと言えます。

AはAnxiety(不安)のAであるとも言われます。強い不安に襲われるとそれを紛らわすために依存行為に走ってしまうというもの。クレプトマニアは根本に枯渇恐怖が強いことが多く、お金が減ることに強い不安を抱くことが多いです。この不安が経済的理由などで強くなれば、盗りたい気持ちが強くなることが十分に考えられます。

依存行為に走らないようにするためには怒りでも不安でも、その感情をため込まずに適度に発散することがとても重要になります。

Loneliness(孤独)

ここでいう孤独というのは実際に一人でいるかどうかではなく、心理的に寂しさを感じているかどうかというものです。

自分に自信がなかったり、心に悩みを抱えている状態の時に一人になると、不安に陥りがちです。この不安が孤独感や寂しさを生み出します。人は孤独な状態で寂しさを感じ続けると、何かで気を紛らわせようとすることが多く、依存行為に走りやすくなります。 また、一人での行動はその行動をとがめられることがないため、依存行為に走りやすいといえます。

Tired(疲労)

疲労には肉体的な疲労に加え、精神的な疲労も含まれます。

疲労度が高い状態では、心の働きが低下してしまいます。怒りや悲しみといったマイナスの感情は強く感じ、喜びや幸福感といった̟プラスの感情は弱く感じがちです。その結果、気分が落ち込みやすくなってしまいます。肉体的・精神的にも疲労がたまった状態だと、感情や欲望をコントロールしにくくなります。そして依存行為に走りやすくなってしまうのです。「盗りたい」という気持ちのコントロールが難しくなり、窃盗行為につながるリスクが高くなります。

SALTということも

依存行為に走りやすい状況の表現でSALTということもあります。Sはsleepy(眠い)、つまり睡眠不足の状態です。睡眠不足は量だけの問題ではなく、質の低下も影響します。睡眠不足の状態では依存行為に走りやすいとされています。また、お酒を飲んでいるときも注意が必要です。酔ってしまうと気持ちが大きくなったり(Happyになる)、「これくらいならいいかな」などと気が緩んでしまいがちです。また普段なら理性で依存行為をコントロールできていても、酔って頭がボーっとしてしまうことで歯止めが利かなくなることがあります。酔った状態での万引きは大胆になりやすく、捕まりやすいことも考えられます。

総じて言えることは、「(上でも下でも)感情の振れ幅が大きい時には十分に注意すべき」ということです。

HALTにならないことが大切

盗らない生活を送るためには、普段からHALTの状況にならないようにするのが一番です。生活全体を見直し、HALTの状況を極力回避する必要があります。すべてを急に変えることは難しいので、できることから取り組めれば良いと思います。また、HALTの状況にあることを自分で感じられるようになることがとても重要です。自分でHALTの状況を把握できるようになれば、その状況でお店に行かないようにするなど何らかの対策を立てやすくなるからです。

ちなみに英語で「halt」は「停止する・止まる・ためらう」という意味です。
お店に入る前には「halt」して(立ち止まり)、「HALT」の状況になっていないか、確認しましょう!

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