中にため込まず、正直に話せる場を
精神的に苦しい時、その苦しみを中にため込まずに外に出すことがとても大切です。弱っている自分を見せることには大きな勇気が必要ですが、どこかに正直に話せる場所があると精神的な負担は全然違います。
隠すことが自分を追い詰める
依存症であることなど、精神的な苦しさを内に抱えたままにする人はとても多いです。精神疾患に関する世間からの目が厳しいことが理由として考えられます。日本の社会はうつ病や依存症などの精神疾患について、否定的にとらえがちです。以前よりは改善していると感じることもありますが、まだまだ精神疾患の理解は十分とは言えません。
クレプトマニアはその依存行為が犯罪であるため、カミングアウトをすることのハードルは特に高いと言えます。しかし、クレプトマニアであること、窃盗行為に依存していることを内に秘めたままにすることはよくありません。犯罪行為に依存している状態を隠すことが精神的な負担になり、自分を追い詰め、さらにその症状を助長してしまう可能性が高いからです。
依存行為のメカニズム ため込むのはよくない!
依存行為はこころの内圧を下げるための行動だと考えられています。高まったこころの内圧を依存行為によって下げようとしている状態であり、ことばにできない苦しさを自分の外に出す方法でもあります。つまり、話すことや書くことなどで苦しさを外に出し、こころの内圧を下げることができれば依存行為を回避できる可能性が高まります。
詳しくはこちらに書いています。
どこかに正直に話せる場を
犯罪行為への依存を打ち明けることはとても勇気のいることです。打ち明けた結果、相手が離れていってしまうリスクはあります。また、相手に理解されないどころか非難されてしまい、自分が傷ついてしまうこともあるかもしれません。
人間は場面によって表情を変え、その社会性を保っています。友人関係や職場など、その関係に支障がなければわざわざカミングアウトしなくてもいい関係もあります。ただし、どこかに本心を打ち明けられる場、アディクションに関する「本音」を話せる場を持つことをおすすめします。クレプトマニアであることを隠し続けるのは、その後ろめたさがとても強く精神的に大きな負担になるからです。「またやってしまった」、「盗りたい気持ちをガマンするのが辛い」、「お店に行くと盗れるなと思ってしまう。」、「万引きをやめたくない」、「やって何が悪い」、「家族にばれて死にたくなっている」など、本当の気持ちを打ち明けても責められたり叱られたりせず、そのまま受け止めてもらえるような場所です。
正直に話せる場所があるだけで、ずっと楽になります。主治医、家族、友人、自助グループでの仲間など、正直になれる場所があると全然違います。
誰にも話せないのなら、まずはホームページ運営者(ゆう)にメールしていただいても結構です。
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最初の一歩は大きな勇気が必要
わたしは万引きを毎日のようにする生活になってから、入院するまでの約1年半の間、自分から正直に万引きをしている事実を話すことはできませんでした。警察にお世話になったことで親が知ることとなったり、病院や自助グループに通うことを始めましたが、どの場所でも自分から万引きをしていることについて話すことはなく、隠し続けました。「万引きをしていない」と嘘をつくことはありませんでしたが、本当のことを話すこともありませんでした。嘘をつくことと隠すことは違う、嘘をついていないからいいんだと自分で自分に言い訳をしながら、隠し続けました。隠し続けた方が楽だと思っていたからです。
わたしが最初に毎日万引きしていたことについて正直に話せたのは、入院時の当事者のみのミーティングです。クレプトマニア当事者同士なので、話しやすい場ではありましたが、とても勇気がいりました。分かってもらえるとは思っていたものの、どんな反応をされるのかという怖さがあったからです。初めて正直に打ち明けたミーティングの後は、全身の力が抜け号泣してしまいました。それと同時に、心が軽くなるのを感じました。隠し続けた方が楽というのは、大きな間違いでした。
今では嘘をつくことも、隠すことも、「正直ではない」という点で同じだと思っています。やはり、正直になることが回復への大きな一歩です。
打ち明けられる場は多い方がいい
最初の一歩を踏み出せた後は、いろんな場面で正直に話せるようになりました。正直に話せた方が楽だということを、身を持って体験できたからです。入院中に主治医、家族、そして入院前に通っていたクレプトマニアの自助グループで、正直に打ち明けました。
家族へ正直に打ち明けることは重要だと思います。依存症患者は家族との関係に問題を抱えていることも多く、回復への取り組みには家族関係の改善や協力が非常に重要な意味を持つことが多いからです。打ち明けたときの家族の反応によっては、本人をさらに追い詰めてしまうことも考えられるのでタイミングや伝え方のなど配慮は必要だと思います。いろんな家族関係がありますが、隠し続けて回復するというのは難しいのではないかと感じています。
当事者同士は話がしやすい
当事者同士が集まる場として、KAなどの自助グループがあります。同じ悩みを抱えた者同士が集まるので、共感できる部分が多くあり話がしやすいです。クレプトマニアの自助グループは数が少なく、実施地域も限られていますが、参加できる方はぜひ参加することをお勧めします。
おすすめはSNSの活用
クレプトマニア当事者同士がつながれるものとして、SNSがあります。わたしはTwitterをやっていますが、多くのクレプトマニアの仲間とつながっています。クレプトマニア同士だからこそ分かり合えるようなツイートをしたり、回復に向けてお互いを励ましあったりと大きな力をもらっています。
Twitterのよいところは、専用のアカウントを作れるところです。クレプトマニア専用のアカウントを作れるので、素性を明かさずに本音をこぼすことができます。
SNSの活用についてはこちらで詳しくご紹介しています。
このサイトの運営者 高橋 悠をフォローしていただければ、多くのクレプトマニア仲間とつながることができると思います。
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共感は難しくても、受け止めてもらうことはできるかも
退院後には、仲の良い友人にもクレプトマニアであることを伝えました。ちょっと勇気が必要でしたが、受け止めてもらうことができました。彼女なら伝えても大丈夫だろうと思ったから話をしたのですが、やはりどんな反応が来るか不安になりました。
クレプトマニア仲間でもなく、家族でもない、友人に話ができたことはわたしにとって大きな自信になりました。
人に話すことが無理なら書き出すだけでもいい
自分の気持ちを正直に外に出すことは、悩みや怒りを発散したり、喜びを大きくすることができます。
中にため込まずに外に出した方がいいことは、何もクレプトマニアであるということだけではありません。対人関係の悩みやちょっとしたい不満など、イライラは溜め込まない方がいいです。なぜなら、そのようなストレスをため込むことが窃盗行為の要因となりかねないからです。また、仕事の愚痴はこの人が話しやすい、家族問題はあの人、というようにはけ口を分散させるのもよいでしょう。
誰かに話すことに不安がある、そもそも話をすることが得意ではないという人もいます。もし、誰かに話すことが難しければ書き出すだけでもいいと思います。
とにかく、内にため込まず外に出すことを心がけましょう。
外に出すことでわかることもある
過去の出来事や今の心境など、外に出すことで、自分でも気が付かなかった内面に気が付くことがあります。忘れたい記憶や思い出したくないことは、記憶に蓋をして見ないようにしていても、それが悪さをしていることも考えられます。最初の一歩を踏み出すのは大変ですが、その一歩が回復への大きなきっかけになるのは間違いありません。
自分の問題点と向き合うためにも、悩みを内にため込まず、正直に出すことを心がけるとよいと思います。
関連する項目はこちらです。
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