早めに対策を!そして、続けることが重要

万引きを手放すために

クレプトマニアは依存症であり、一人で回復することは困難です。まずは早めに対策を始めることが重要であり、それを継続することが重要です。

まずは第一歩

クレプトマニアではないかと認識しても、回復への第一歩を踏み出せない人も多くいると思います。

クレプトマニアと認めることに抵抗がある、他人に打ち明ける勇気がない、家族に相談できない、やめなきゃとは思っているけどやめることが怖いなど、いろんな理由があると思います。最初の一歩を踏み出すことは本当に勇気が要ることであり、とても大変です。クレプトマニアなどの依存症は、依存期間が長くなればなるほど回復には時間がかかります。治療などの対策の開始は早いに越したことはありません。先延ばしにすればするほど、最初の一歩を踏み出すことが大変になります。

つまり、今すぐにでも行動に移すことが一番の回復への近道です。早急に助けを求めましょう。

すぐには効果は表れない

依存症の回復に特効薬はありません。また効果があったとしても、レントゲンで異常が見つかったり、血液検査で異常な数値が出るといった目に見えるようなわかりやすい変化は起こりません。いろんな対策を講じても、効果が表れるのには時間がかかります。また依存症に完治はなく、あるのは回復のみで、一生回復し続ける必要があると言われています。長期戦になることを覚悟して、対策に取り組みましょう。

効果のあらわれ方は成功曲線

成功曲線とは、あることへの取り組みにかける時間とその成果(効果)の関係をグラフで表したものです。

多くの人は、努力をすれば時間に比例して効果(図では成果)が表れてくるというイメージを持っています(青線)。 しかし実際には取り組みを始めてもしばらくの間は、効果はほとんど見えません。そして、ある程度時間が経過してから急に伸びてきます(赤線)。

このイメージと現実の間にはギャップがあり、このギャップが不安を生みます。効果が出るまでは、時間経過とともにこのギャップ(不安)が徐々に大きくなります。そのため、この効果が見えない期間に挫折してしまう人が多いのです。しかし、この不安を乗り越えれば急激に効果が表れます

成功曲線の意味するのは「効果が表れるまでにはそれなりの時間を要する」「効果が表れ始めると急激に伸びてくる」ということです。

効果が出るのは階段状

取り組みを続けると成功曲線は繰り返し現れます。その結果、取り組みに対する効果の出現は階段状になっていくと考えられています。

こちらの図は公文式のホームページから引用したものです。

これは成功曲線を何度も繰り返す様子を図式化したものです。ここでは効果が表れない時期を準備期、急激に成長する時期を発展期としています。一度効果が表れると、再び効果が表れにくい時期(足踏み状態)が訪れますが、これは高原期とされ、次のステージの準備期でもあります。この高原期・準備期を乗り越えると再び発展期が訪れ、これ繰り返すうちにそれぞれの期間は短くなります。

何事も究めるためには、この3つのステージを3回経験することが必要と考えられています。伸び悩んでも2回までは我慢して続けることが大切であり、3回やってもだめなら方法が向いていないとあきらめてもいいと言えます。逆に言えば、それまでは諦めずに続けること、うまくいかなくても再チャレンジすることをお勧めします。

効果が出ないときにいかに続けられるか

回復に向けて取り組む人は、大きく2つにわけられます。それは「途中で諦める人」「結果が出るまで継続する人」です。

依存症治療には「こころの変化」と「行動の変化」があると思います。こころの変化は成功曲線のように現れるため、すぐには効果が出ません。さらにこころの変化が感じられても、それが行動の変化(依存行為を手放す)につながるまでにもう一段、階段を昇る必要があるように感じます。変化の順番は前後することもあると思いますが、いずれにしても取り組み始めてもすぐには効果が出ないため、諦めてしまう人が多いのです。効果が感じられないときにいかに対策を続けられるかどうかで、回復に向けて大きな違いを生みます

例えば、「自助グループに通い始めたけど、盗りたい気持ちも行動も変化がない」という場合でも、焦ってはいけません。「自助グループに通う」という回復に向けての第一歩を踏み出した自分自身をほめ、続けることが大事です。「万引きは何とかおさえられても、盗りたい気持ちが減らなくてしんどい」、「盗りたい気持ちは前より少なく、前より量は少ないけどやっぱり万引きしてしまう」という場合、既に変化は表れています。「盗りたい気持ちがあっても、行動を抑えられていること」、「こころに変化が現れ、盗る量が減っていること」は大きな効果、ここまで続けられている自分をほめてあげましょうこのまま続けることで、もっと大きな変化が現れる可能性が高いといえると考えます。

「回復への取り組みを模索する」というのは、「次から次へと新しい方法を試してみる」というのとはちょっと違うと思います。これだと「短距離走を繰り返し、ヘロヘロになり対策をやめてしまう」という状況になりがちです。回復の取り組みは長距離走です。ゆっくり走っていると周囲の速い人に目移りしたり、前を走っている人に追いつこうと速度を上げたくなったりもします。そこで速度を上げてしまうと元の木阿弥です。「これならできそうと思うことに程々の出力で継続的に取り組む」、模索が必要なのは方法云々というよりも、出力の程度(取り組み方の問題)なのではないかと感じています。「上手くいかない、だから別の方法」ではなく「上手くいかない、やり方を工夫してみよう」、そんなイメージです。

場合によっては、回復への取り組み方法があっていないこともあると思います。でも効果が出ない多くの場合、その方法があっていないのではなく「効果が出る前に諦めてしまう」のではないでしょうか?効果が出ないときには、取り組みがあっているか不安になります。そんなときは成功曲線をイメージし、諦めずに続けることが大切です。

慌てず・焦らず・諦めず、回復に向けての対策に取り組むことが結果につながると感じています。

3歩進んだあとには2歩下がることも

地道に取り組みを続け、やっと効果が出て前に進んだ感じがしても、また下がってしまうこともあります。「3歩進んで2歩下がる」、そんな状態です。もっと言えば、3歩進んでも3歩下がることもあると思います。でも、ちょっとは進んでいます。そして、下がった部分は踏み固められたことで次に進むときには歩きやすくなっているはずです。実際には下がっておらず、スピードが落ちただけで下がったと感じてしまうこともある気もします。いずれにしても、そこに意味はあるはずで、継続することが大切です。

取り組みがあっていないと感じたら

ある対策に取り組んでも効果が出ないと、「方法があっていないのでは?」と感じることもあります。効果が感じられないのは「方法があっていないから」なのか、「効果が出るまで時間がかかっているから」なのかの判断はとても難しいところです。

個人的には「大きくマイナスになっていると感じない限りは続けるべき」だと考えます。また、一度合っていないと思った対策でも、状況が変化すると感じ方が変わることも十分に考えられます。「前やったけど、合わなかった」というものでも、もう一度取り組んでみる価値があるかもしれません。

効果が出ないときの考え方については、こちらにも書いています。

回復し続けるために

一度結果が出た先でも「結果が出ることでやめてしまう人」と「結果が出てもさらに継続する人」に分けられるように思います。対策を続けてもスリップ(単発の失敗)してしまう人もいるのが依存症、対策をやめてしまえばスリップのリスクはとても高くなります。

スリップに至る経緯も成功曲線のような経過をたどるように感じます。ある程度盗らない生活を送れると、通院や自助グループへの参加、買い物時の盗らない工夫などがおろそかになっても、しばらくは問題なく生活ができるのだと思います。しかし、行動には現れていなくても時間経過とともに徐々に行為欲求は強くなり、あるとき急激に欲求が高まりスリップに至ってしまうということが多いのではないでしょうか。

依存症に完治はなく、回復を目指す取り組みに終わりはありません。状態によっては、盗らないための対策の量や頻度を減らしても問題ない場合もあると思いますが、完全にやめてしまうことはリスクが高いと言えるでしょう。

関連する項目はこちらです。