依存先を分散させる

2020年11月21日

特定の行為に依存しすぎてしまうのが依存症。依存症からの回復には、依存先を分散させることが有効と考えられています。

どのように依存行動が起こるのか?

依存行動はこころの内圧をコントロールするための手段の一つです。依存先を分散させることのイメージを掴むためにも、依存行動に走ってしまうメカニズムを理解するとよいと思います。

下の図はその人の内面(こころ)を表しており、円の外に出ているトゲはその人の行動を表しています。最も大きな癖が依存行動です。

ストレスや葛藤などは何らかの方法で発散する必要があります。この図のトゲは行動の癖を表していますが、小さなトゲは害を及ぼさない程度のもので、それらの行動でストレスを発散しています。適度に依存している状態です。人は誰しも、何かに依存しながらこころの内圧をコントロールしています。適度に依存することで内圧がコントロールできている状態ならよいのですが、それが特定のものに病的なレベルで依存する状態(大きなトゲ)になってしまうと依存症になるのです。

依存症にならないためにはこころの内圧をうまくコントロールする方法を身に着けることが大切です。そもそもストレスになることを避けこころの内圧を高めないことはもちろんですが、高まった内圧を下げる方法を身に着けることが重要になります。その一つの方法が、ことばにして外に出すという別の排水路を作るという方法です。

詳しくはこちらでご紹介しています。

依存先を分散させる

依存症はこころの内圧を下げるために、特定のことに病的に依存してしまった状態と言えます。特定の依存先に集中することを避けるには、他の依存先を見つけ依存先を分散させることが有効です。上の図で言うと小さなトゲを多く作るイメージです。ことばにして外に出す場所を含め、依存先をたくさん持っている人の方が回復しやすいと言われています。アディクション(依存行為)を必要とするのは、生き抜くためにそれしか依存するものがなかったからともいえます。逆説的な言い方になりますが、「依存症から回復する」ということは、「依存先をたくさん増やし、分散させる」こととも言えます。

依存先として、趣味活動を行うことでストレスを発散することなどがあります。仕事が生きがいで、仕事によってうまくこころの内圧をコントロールできているという人もいます。何でも話せる場所というのも依存先の一つです。また、人に依存することもできます。依存症になりやすいタイプに「一人で何でも抱え込んでしまう」というのがあります。人に頼ることが苦手で、何でも自分で解決しようと助けを求めることができないのです。困った時、悩んだ時に誰かに頼るのも一つの依存です。高まったこころの内圧を下げるための依存先を多く持てていれば、それらを場面に応じて使い分けることもでき、特定のことに病的に依存してしまうリスクは低くなります。

ストレスを貯めこみやすいと依存症になりやすいと言えます。「ストレスを感じやすい」、「ストレスに対する耐性が低い」というのもあると思いますが、それ以上にストレスを発散するのが苦手でどんどんため込んでしまう人が多いように感じます。適度にガス抜きというか、こまめな発散ができていればいいのですが、それができずにため込んでしまい依存行動という大爆発を起こしてしまうのです。

また、「ストレスが溜まっていることに気づきにくい」、「こころの声に耳を傾けるのが苦手」というのも大きな問題です。ストレスを貯めこむことが当たり前になっていて、その状態に本人が気づいていないということも多くあります。「ストレスを発散しないとまずい」ということがわからないのです。そのため、「ストレスがたまり、こころの内圧が高まったから下げる」というのではなく、「普段から依存先を分散できる状態にしておき、こころの内圧を高めないようにする」くらいの心持ちでいる必要があるのだと感じています。

依存行動に置き換わる何かを探す

依存行動を手放すために、他の方法でこころの内圧を下げられるようになる必要がありますが、それには依存行動で得ていたものを他の何かで得られるように「置き換える」ことを考えるとよいと思います。例えばテニスを趣味にしていた人が手をケガしてテニスができなくなってしまったとします。そのような場合、新たな趣味として読書や映画鑑賞なども考えられますが、やはり運動をする・身体を動かすという目的が共通しているジョギングなどの方がテニスに代わるものとして当てはまりやすいでしょう。それと同じように、依存行為でどんな気持ちを得ていたのかを考え、それに近いものを探してみるとよいと思います。

そのことはこちらにも書いています。

一連の流れが「儀式」と化していた

わたしの場合、万引きに何を求めていたのかを考えてみたとき、その商品が欲しいというのはもちろんあるのですが、お店で窃盗をすることだけでなく、帰宅してから盗ったものを部屋に並べ、おおよその金額を計算して満足感を得るという、一連の流れで達成感・満足感を得ている節がありました。その「儀式」ともいえるような一連の行動をすること依存していました。まさに「行為依存」です。

そして、今でもこのような「儀式のような一連の流れ」で達成感・満足感を得たいと思ってしまう習性があります。さらに言うと、「ちょっと人に言いにくいというか、あんまり他人に知られたくない、自分だけの秘め事のようなこと」、「特に意味があるわけではないが、それをやること自体に意味があること」、そんな「儀式」めいたことが欲しいと思ってしまうのです。そこでわたしは、「買ってきたものを部屋に並べ、レシートと照合して満足する」、「吟味して買った商品と照らし合わせたレシートを家計簿に入力し、「割引品が買えた!お得な買い物ができた!」とニンマリしながら達成感を得る」、ということで置き換えました。

他には「ものを盗ってシリーズ物などを全て揃える(コンプリートする)ことで満足感を得ていた」、「ストック棚がきちんと埋まることに達成感を感じた」、「捕まらないようにすることの駆け引きやスリルに達成感を得ていた」などがあると思います。これらを窃盗ではなく、「ジグソーパズルやナンプレなど、パズルを完成させることで達成感を得る」、「対戦型のスポーツで相手との駆け引きを楽しむ」など真っ当な方法で行うことで置き換えられれば、依存行為を手放した後の喪失感は起こりにくいと思います。

ハマりすぎに注意!

依存先の置き換えで注意しなくてはいけないのは、置き換えた先にハマりすぎてしまうことです。依存症者の多く見られる特徴として、白黒思考があります。出力調整がうまくいかず、極端な行動に走りやすいのです。やるとなったらとことんやってしまう、そんな感じです。そしてクロスアディクションと言われる、違う依存症へ移行してしまう状況に陥ってしまうこともあります。実際、「万引きはしなくなったが、ものをため込みたい習性は変わらず買い物依存症になってしまった」、「万引きで得ていたスリルをギャンブルやゲームに求めてしまい、ギャンブル依存症・ゲーム依存症になった」などということもあります。また、特定の人に依存しすぎてしまうのも「共依存」と呼ばれる病的な状態になってしまう可能性があります。

窃盗という依存行動とは別の方法でストレスを発散できるようになるために、置き換え先を見つけつつ、関連性の低いストレス発散方法を見つけ、依存先を分散させるということが必要なのではないでしょうか?また、そもそもの依存気質を改善するために、こころの問題点と向き合うこともとても重要だと思います。

関連する項目はこちらです。