万引きに逃げていたことを再認識

わたしの実体験

盗らない日々を送れるようになって約1年と5カ月が経ちました。最近感じるこころの変化を記録しておこうと思います。

やたらと凹むようになった

あるとき、仕事で失敗をしました。以前から自分の中で課題だと思っていた、他人とのやり取りでの出来事で、自分の主張を押し通そうとしすぎてしまいました。自分でも「言い過ぎてしまった」、「相手のことを考えられていなかった」などと思っていましたが、案の定先方から苦情が来てしまったのです。以前から改善に取り組んでいた問題で、また同じような失敗をしてしまったことにかなり凹みました。そして、凹んでしまった気持ちがなかなか浮上してこないのです。

更に追い打ちをかけるように凹むことが続いてしまい、凹みまくりました。

なぜ、こんなに凹むのか?

凹む日々が続いていた時、ふと思ったことがありました。それは「盗っていた頃はこんなに凹むことはなかったのでは?」ということです。

今までになく凹む状況になって、「こころの葛藤を万引きにぶつけていた」、「弱い自分と向き合わずに万引きに逃げていた」ということを強く思うようになりました。また、盗っていた頃は万引きに頭が支配されているような状況で、他のことに目を向けられず凹むことすらなかったのだろうなとも思います。

万引きに依存しない生活を送る中で「やっぱりわたしは万引きに依存していたんだ」ということ再認識しました。

正直に話すことを意識しているから凹む

やたらと凹んでしまう別の理由として、「正直に話すことを意識しているから凹む」ということがあります。

今まではバレなきゃいいと誤魔化していた小さな失敗なども、なるべく正直に話すことを意識しています。クレプトマニアにとって「バレなきゃいい」という発想は本当によくないし、この発想にスイッチが入ってしまうことは再発リスクを一気に高めてしまうからです。人に知られたくないことをバレなきゃいいと隠したり誤魔化したりすることは、事実から目を逸らし嫌なことから逃げているようなものです。誤魔化して触れないことで、凹まずに済んでいたのだと思います。自分の弱さをさらけ出すことから逃げ回っていました。それを改善しようと隠したいことを正直に話し、自分の弱さをさらけ出すのは、はっきり言ってとてもしんどいし、凹みます。

でもこれもトレーニングです。「正直になることはしんどい、だから話さないで隠す」ではなく、話して凹んだ時の対応法を身に着けられるようにすればいいと思っています。

対応法も身についてきている!

凹んでいて、かなりしんどいと感じることも多いですが、盗りたい気持ちは起こっていません。それは凹んでいるということをいろんな場面でいろんな人に話したり、文章にまとめたり、自分なりの方法で外に出すことでこころの内圧をコントロールできているからだと思います。1人で抱え込むのではなく、どんどん外に出すことで何とかなっています。人に相談することでアドバイスをもらえることも多いです。クロスアディクションなので過食嘔吐もありますが、現状維持程度で済んでいます。

失敗したことを正直に話したときも、いろんな人が助けてくれました。本当にいろんな人に助けられています、感謝感謝です。1人では回復できないと痛感しています。

小さなこころの変化に目を向けることが大切

とても印象に残っている、先行く仲間のスリップしてしまった時の体験談があります。

『万引きを手放せた当初は手放せたことに満足感があるし、喉元に熱さがあるのでこころの変化にも敏感になっている。でも盗らない日々が当たり前になってくると、どうしてもこころの変化に疎くなってしまう。そして、「盗っていないから大丈夫」という気の緩みが出てきてしまいがちで、そういうときに、スリップが起こりやすい。後になって思えば、スリップしたときには伏線があった。いきなりスリップするのではなく徐々に近づいていっていた。でも、クリーン(盗らない生活が送れている期間)が長くなっていたこともあり「盗っていないから大丈夫」と、こころの変化に疎くなっていた。こころの変化に敏感になっていられれば、スリップは避けられたかもしれない。クリーンが長くなっても、こころの変化に目を向けることが大切。』

先行く仲間の体験談は本当に貴重です。勇気を持って弱さをさらけ出してくれた仲間の体験談は、本当に心に響き力を与えてくれます。

いばらの道を楽しむ

万引きを手放した当初は、手放せたことに満足感・達成感があり、本当に楽でした。「こんなに楽なんだから、もう万引きしたいと思うことはないのかも?」とも思う自分もいました。

もちろん、盗らない日々の方が楽だし、盗っていた頃に戻りたいなんて微塵も思いません。でも、盗らない日々を過ごす中で、手放した当初には予想していなかったこころの変化が起こっていて、また別の意味でのしんどさがあり、回復し続けることは簡単なことではないと痛感しています。

今は、それなりのしんどさがあるのが「アディクトである自分」なんだなと受け入れられています。

盗らない生活を送れるようになって約1年と5カ月、こころにはいろんな変化がありました。わたしはとにかく頑固なので、変わることも変えることも拒んできた部分がたくさんあります。それが、クレプトマニアになって自分なりの底つきを経験し、いろんな人の助けを借りながら問題点と向き合うことで、こんなにもこころが変化するのかと自分でも驚いていますしんどいこともとても多いですが、その変化が楽しいです。

自分のこころの変化に耳を傾け、変化を楽しみながら、盗らない日々を積み重ねる努力を続けたいと思います。

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