わたしのクレプトマニア経歴④

わたしの実体験,わたしの歴史

通院・自助グループ通いを始めましたが万引きは続いていました。万引き中心の生活が続いてしまっていました。

自分なりに悪あがきしてみた

万引きがやめられないことがまずいとは思っていました。でも、万引きをやめたいとは思えていないというのが現実でした。「どうしたら万引きをやめたいと思えるのか?」、それが悩みでした。

「万引きをやめたい!やめよう!」と思えるように、効果があると考えたことを自分なりに試しました。裁判傍聴に行き、被告人になってはだめだという思いを強めました。情状証人に立つ家族を見て、両親にあそこに立たせてはいけないと思いました。 Youtubeで万引きGメンの動画をみて、万引きはだめだと言い聞かせました。刑務所生活を描いた本を読んで、刑務所に入りたくないという思いを強めました。取り調べで検察庁に出頭したときには、2度とこのような思いはしたくないと思いました。海外旅行のパンフレットを見て、前科が付いたら気軽に海外に行けなくなると言い聞かせました。

でも、万引きをしてしまうんです。

裁判傍聴からの帰り道、検察庁からの帰り道、病院受診の帰り道、自助グループの帰り道、そんなときでもお店に寄って万引きをしていました。病院受診の時には待ち時間中に外出し、その間に近くのお店で万引きをして診察室に盗品を持って入り、主治医には「万引きをしてません」と言う、そんなこともしていました。万引きしないと逆に不安になるというか、その日が終わった感じがしないような感覚です。そして最後のお店を出た帰り道には、翌日どこのお店で何を盗るかを考えていました。万引きのことが頭から離れない、脳が万引きに洗脳されているような状態です。盗りたいというよりも、「盗らねばならない」くらいの勢いで万引きをしていました。完全に万引きにハマっていて、「no shiplifting, no life!」(万引きのない人生なんてありえない!)くらいの感覚になっていました。

今思うと、「捕まることのデメリット」ばかり考えていて、真の被害者である「お店」のことを考えられていませんでした。捕まるかどうかにかかわらず、わたしは加害行為をしている、そういう認識が圧倒的に乏しかったです。

入院を決意する

毎日万引きする生活を続けていれば、必ず捕まります

3回目に捕まったときは警察署にはいかずに、交番で注意されただけでした。これに関しては、運が良かったとしかいいようがありません。交番から両親に連絡をしたので、万引きが止まっていないことを両親が知ることとなりました。

これを機に、自分から入院をしたいと言いました。もう、通院と自助グループ通いだけで万引きをやめることはできないと思いました。万引きができる環境にいながら、万引きを我慢することは無理だと思いました。この場に及んでも「万引きをやめたい」とは思えていませんでしたが、それ以上にやめなきゃまずいという危機感がありました。

仕事を休んで3か月入院する、仕事が休めないなら仕事を辞めてでも入院しなきゃまずい、そのくらいの思いでいました。

偶然のタイミングでの退職依頼

入院を決意し、会社に長期休みのお願いを伝えようと思っていたタイミングで想定外のことが起こりました。会社側から4か月後に会社都合で退職してほしいという依頼があったのです。

驚きました。事業所閉鎖による退職でしたが、わたしはその事業所に異動して半年程度しか経っておらず売り上げも伸びていたからです。売り上げ改善を目指すように言われて異動し、結果を出したのに閉鎖することに不満はありましたが、仕事のことを気にせずに入院できるのはよいことだと思い退職を決めました。そして、なるべく早く入院するという予定を4か月後の退職まで先延ばしにすることになりました

入院を決意したがやめたいと思えてはいなかった

入院を決意し、病院側にも伝え、キャンセル待ちまでしていました。しかしそのタイミングで4か月後に会社都合で退職することになったので、入院を先延ばしにすることになりました。

入院を先延ばしすることになったときは、正直、うれしかったです。なぜなら、「入院するまで万引きできるから」です。この場に及んでも万引きをやめたいと思えておらず、むしろどうやって万引きをし続けられるかを考えていました。「もうやめるには入院しかない、だから入院はする。では入院までどうやって捕まらずに盗り続けるか?」そんなことを考えていました。毎日の万引きをやめるなんて、考えられないような状態でした。その4か月にはクリスマス・お正月があり、その時期に万引きできることをうれしいとさえ思っていました。

このとき、主治医からは「入院を先延ばしにすると、そのあいだにスリップしちゃう人がいるから気をつけてね」と言われました。笑ってごまかしましたが、顔は引きつっていたと思います。主治医にはわたしのこころの中が見えているのかとも思いました。

盗り納めと覚悟

退職した後も何かと理由をつけて入院を先延ばしにしました。万引きする生活を少しでも長く続けたいと思っており、万引きをやめることが怖かったのです。通勤に使っていた定期券の有効期間が残っていたことも大きな理由です。その定期券を使えばあちこちで途中下車して、あちこちのお店に行けるからです。つまり、定期券の有効期間が切れるまで、それを利用してあちこちで万引きをしたかったんです。

入院までは盗り続けたい、盗り続けようと思っていました。一方で、「入院したら絶対に万引きはやめる」と決めていました。そう思っていたので、入院前日は盗り納めにすると思って盗りました

実は入院の前日、盗り納めにしようと思って行ったお店の店内で万引きGメンに目をつけられました。それに気づいたわたしは、何も盗らずにその店を後にしました。そして違うお店に行き、改めて盗り納めをして自分に「最後だ」と言い聞かせました。一度やると決めたら、貫き通してしまう、そこまでして「盗り納め」をしました。悪いことだとわかっていましたが、盗り納めをして覚悟を決めました

盗り納めをして帰宅した時、「やっと入院にたどり着いた」と思いました。捕まらずに入院にたどり着いたことにほっとしました。「これで万引きをやめられる。いや、やめるんだ。やめるために入院するんだ。」と何度も言い聞かせました。

この盗り納めの日を最後に、多くの人のおかげで、わたしは盗らない一日を積み重ねることができています。

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