盗りたくなっても盗らなければいい

2020年10月21日

盗りたい気持ち(窃盗衝動)はすぐには消えないことも多いですが、盗らなければよい、衝動を行動につなげなければよいと思います。

盗りたい気持ちはすぐには消えない

盗らない生活を送り始めた直後の方とやり取りをすることがあるのですが、「盗りたい気持ちが消えないことが不安」、「盗りたい気持ちがあることに罪悪感や情けなさを感じる」といったことを聞くことは多くあります。そして、「このような気持ちは今後どうなるのでしょうか?」と質問されることもよくあります。

クレプトマニアが万引きをやめようと思うパターンの一つに、お店で捕まったり警察に逮捕されるなどして「窃盗行為がバレる」ということがあります。そのことで「やめなきゃまずい、やめよう」と思うのです。しかし、「やめよう」と思ったからと言って窃盗衝動(盗りたい気持ち)がなくなるとは限りません。むしろ、なくならないことの方が多いと思います。また、捕まった恐怖などから一時的に衝動が治まっても時間経過とともに再び衝動が襲ってくることもあります。残念ながら窃盗衝動はそんな簡単にはなくならない、それが依存症の現実なのだと思います。

盗りたい気持ちと行動は別物

結論から言えば、「盗りたくても盗らなければいい」ということです。頭の中で何を思おうが自由です、それを行動につなげなければいいんです。例えば、ダイエットをしようとして「今日から食後のデザートはガマンしよう!」と宣言したとします。宣言したところで急にデザートを食べたい気持ちが起こらなくなるわけではないですよね。「冷蔵庫にプリンがあったよな…」とか、「食後のアイスが食べたい…」となるのはごくごく普通のことです。そう思ってしまうことは全然悪いことじゃないし、結果的にガマンできたならそれでいいんです。むしろ、食べたいと思ってもガマンできた、その結果をほめてあげるべきなんじゃないかなと思います。そして、ガマンすることになれてきたり、ダイエット効果が表れてきたりすることで、食後のデザートは食べないことを普通のことにすることもできます。他の例としては禁煙もわかりやすいと思います。

窃盗についても同じことが言えるのではないでしょうか?やめると決意したからと言って、すぐに欲求が治まるわけではありません。かといって、ずっとガマンし続けなくてはいけないわけでもありません。盗りたい気持ちをガマンし、盗らない生活を続けるうち、盗らない生活の良さを感じることができると思います。また、盗ってきたことを正直に話したり、自分の心の問題点と向き合うことで衝動が起こりにくい状態を作ることもできるはずです。その結果、盗りたい気持ちが徐々に少なくなり、盗らない生活が送りやすくなっていくという流れです。また、依存症のメカニズムを知り、負の感情をため込まないようにするなど、こころの問題と向き合うことで窃盗衝動が起こらない状態を作っていくことができるのだと思います。わたしの場合、今は盗りたい気持ちは起こっていません。

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ガマンできた自分をほめる

万引きをやめようと思っても、窃盗衝動は簡単には消えないことも多いです。そうなると「やってはいけないことなのに、なんで盗りたいと思ってしまうんだろう…。」と窃盗衝動があることに罪悪感を持ってしまうこともあります。でも、考えてみれば「ガマンできている」というのはほめるに値することです。依存症患者にとって、衝動をガマンして行動につなげないというのはとても大変なことだからです。むしろ「窃盗衝動がある」ことで自分を責めてしまうのは逆効果です。それがストレスになり、窃盗衝動を強めてしまうという悪循環にはまってしまう可能性もあります。

わたしは盗りたい欲求があった頃は、まったくと言っていいほどガマンすることができませんでした。クレプトマニアと言えども警察に捕まると一時的にでも我慢できる人も多いのですが、わたしは1日もガマンできませんでした。お店で捕まって、交番に行きその場で返されたということもあったのですが、その時なんかはその帰り道で万引きしてしまうような状態でした。だから、ガマンすることがどれだけ大変なことか、よくわかります。

「お店に行っていないんだから、盗らないのは当たり前」、そんな話題になることがあるのですが、お店に行かないという回避行動をとれたという意味で、それは盗らないための努力の結果であり十分にほめるに値することだと思います。わたしの場合万引きがやめられなかった頃は、仕事の後まっすぐに家に帰るということができませんでした。帰りの電車の中で「万引きしないためにお店に行くのはやめよう!」と思っていても、改札を出るとどうしてもお店に寄ってしまう、そんな状態でした。お店に行くことすらガマンできませんでした。

盗りたくなる場面を回避するということも含めて窃盗衝動に打ち勝ってガマンできるというのは本当にすごいことですよ。盗りたいと思っても結果的に盗ってない、そんな自分をほめてあげてください。

盗りたい気持ちを分析してみる

盗りたい気持ちになってしまったのなら、むしろそれを利用して次につなげてられるとよいと思います。どういう時に盗りたくなるのか、そのときのこころの状況や場面を把握すれば盗らないための対策を立てやすくなります。

買う生活を続けることで身の丈に合った生活に

わたしは入院生活を経て盗らない生活が送れるようになり、今は盗りたいという気持ちも湧いていません。お店にいる時など、「前だったら、こういう場面で盗ってたな」とは思うことはありますが、その先にはいっていません。そのような場面では「盗っていたことが間違い、ちゃんと買わなきゃ」と気を引き締めています。今思うと盗っていた頃は、買わずに盗ることが前提だったので目をつけるものが違うというか、欲しいものの基準が違っていました。金額的に買えるかどうかではなく、盗れるかどうかで判断してしまっていました。結果的に高価のものに手が伸びることも多くありました。お金を払って買うとしたら、諦めるようなものです。

わたしは自分が食べるものを万引きしてしまっていましたが、ちゃんと買う生活になると盗っていた頃には当たり前のように手にしていた高価な食材には手が伸びなくなりました。かといって、不満があるわけではありません。高い食材も美味しいですが、安い食材でもそれなりに美味しいです。そしてなにより、買ったもので作った料理を食べる時には後ろめたさはありません。ちゃんと買う生活を続けていくことで、身の丈に合った生活になり、それなりに満足できるようになる、そう感じています。

盗りたい気持ちがないからと言って油断は禁物

今は窃盗衝動が起こることはありませんが、今後再び窃盗衝動が起こることは十分に考えられます。それが依存症であり、油断は禁物です。わたしは窃盗衝動をガマンできたことがほとんどないので、「衝動が湧いてきたら、どう対処していいかわからない」という不安はあります。だからこそ、お店に入る前に「盗りたい気持ちが湧いていないか?」ということをいつも確認しています

だからといって、すごく窮屈な生活をしているかと言ったらそんなことはありません。万引きがやめられなかった頃よりもずっと気楽です。盗りたい気持ちがないことを確認したあとは、買い物を楽しめています。ガチガチに緊張しているという感じでもありません。盗らない一日を積み重ねることで、窃盗衝動から解放された生活を送れるようになったと感じる日々です。

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