まずは盗らない期間を作ること!

万引きを手放すために

回復に向けての第一歩が、「盗らない期間を作ること」です。一歩目がなければ、何も始まりません。

きっかけは何でもいい

万引きが止まるきっかけはいろいろありますが、自分の意志だけでやめられる人は少ないと思います。「警察に逮捕された」、「家族にバレた」、「ケガをしてお店に行けなくなった」、「警備員に見つかり、捕まらなかったけど怖い思いをした」などなど、多くの場合が他力だと思います。でも、万引きが止まるきっかけは何でもいいんです、とにかく利用しましょう!

止まった直後がチャンス

逮捕や警備員に見つかるなど、バレることで止まることが大半だと思います。よくあるパターンがこんな感じです。「2度とあんな思いはしたくない、やめなきゃ」と思い、しばらくは止まります。そう、一時的に止まっているだけの場合がほとんどです。気合で止めているだけで、依存症の根本的な問題が解決したわけではないからです。そこで何も対策を講じないと、多くの場合再発します。でもしばらく止まっていると「このままやめ続けられるのではないか?」と思ってしまうのです。しかし何も対策を講じなければ、喉元にあった熱さがどんどん失われていきます。

万引きは成功率が高い犯罪です。そのため、やめられてしばらくすると「このままやめ続けられるのではないか?」という思いが浮かぶ一方で、「ちょっとくらい大丈夫だろう」、「バレなきゃいい」という考えが頭に浮かびやすくなります。捕まった時・バレたときの気持ちは忘れてしまうのです。喉元過ぎれば熱さを忘れる、本当にそんな感じです。喉元に熱さがあるうちに、今までとは違う盗らない自分になる方向へ進むために動く必要があります。そういう意味で、やはり止まった直後が回復への取り組みを始めるチャンスと言えるでしょう。

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盗らない生活の良さを実感しべし!

盗らない生活を送れるようになれば、盗らない生活の方が楽だと実感できるときがくると思います。ずっと依存してきた行為を手放すことは大変なことであり、最初は苦しいこともありえます。後日逮捕の不安はすぐには消えないかもしれませんが、時間とともに減らすことができるはずです。盗らない生活の良さを実感することで、「万引きに依存する生活に戻りたくない!」と思えるようになることはとても重要なことだと思います。

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盗っていた頃はこころに響かなかった

盗らない生活を送れるようになるとこころに余裕ができると思います。そうするとものの見え方、受け止め方が変わってきます。毎日のように万引きをしていた頃も頭では「万引きは犯罪行為、被害者を生んでいる。盗ってはいけない。」、「捕まったら家族、職場などいろんな人に迷惑をかける」と思っていました。そして、先行く仲間から「盗らない生活の方が楽だよ」と言われて、やめられた方がいいんだろうなとも思っていました。でも、こころに響いてなかったのだと思います。どこか軽々しいというか、他人事というか、対岸の火事というか、全然こころに入っていっていなかったなと。どこか話半分で、軽々しくしか受け止められない感じでした。

「アルコール依存症の人が酔っ払っているときに話をしてもムダ、頭に入っていかないし、こころに響かない。お酒をやめて酔いがさめてからでないと効果がない。」ということを言うことがあります。これはクレプトマニアにも同じことが言えるのではないかと思います。依存行為にハマっているときには、酔っ払っているのと同じような状態です。万引きが止まることでこころに余裕ができ、ことばが響くようになることでこころが変わるチャンスがやってくると思います。万引きが止まったらそこで安心するのではなく、盗らない期間にいかにこころを変えられるかが大切になると言えるのではないでしょうか。

わたしは入院することでやっと盗らない期間を作ることができたのですが、その期間ができたことでいろんなことばがこころに響くようになりました。そして、捕まることはもちろん、万引きをすることでどれだけ多くの人を傷つけてしまうのかをやっと認識できるようになりました。同じことばを聞いても受け止め方が全然違うのです。「万引きしたらお店に迷惑がかかる」、そんなことわかってるつもりでした。でも全然わかってなかった、頭でわかっていてもこころに響いておらず、どこか的外れだったと思います。

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止まらなくても、続けたことに意味があった

万引きがやめられない時期にも自助グループに通っていて、それなりに効果を感じていました。でも、今思うとその効果は半減していたと思います。仲間の話を聞いていても、万引きのことが頭から離れない、そんな感じだったからです。盗らない生活を送れるようになってこころに余裕ができると、今まで以上に仲間の話がこころに響くようになりました

だからと言って、自助グループに通い続けたことに意味がなかったわけではありません。通い続けているから、この程度で済んでいると自分に言い聞かせていました。そして通い続けたことで、なかなか入ってこないことばも、こころに引っかかるようになりました。それが入院を決意する大きな後押しになりました。今やめれていなくても、盗らない期間を作るために「慌てず・焦らず・諦めず」に行動し続けることが大事だと思います。

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「盗れない環境を作る」必要があることも

わたしの場合、「盗れる環境で盗らない」ということができなくなっている自覚がありました。警察に捕まっても、翌日から盗ってしまうような生活だったからです。「万引きを止めるためには盗れない環境に行かないと無理」、そう考えたので入院を決意しました。盗れない環境を利用して、盗らない生活を送ることでこころに余裕ができ、回復への歩みを進めることができたと思います。わたしには入院が必要でした。「盗れる環境だとガマンできない」、そういう状況であれば入院や施設入所など盗らない環境を作ることも検討すべきだと思います。

「盗れる環境でも盗らない」ことができるのなら、なるべく早期に医療機関自助グループにつながったり、回復への取り組みを行うなどして、盗らない生活を継続することも可能だと思います。回復に向けての取り組みを行わず、「盗りたい気持ちをガマンする」というような気合と根性だけで一人で戦おうとする状態では厳しいでしょう、依存症という病気なので。

盗らない期間を作ること、そしてなるべく早い段階で回復への取り組みを始め、それを継続することをお勧めします。 万引きが止まったとしても、一人で戦おうとせず早めに助けを求めてください。

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