万引きを手放せた3つの大きな要因

万引きを手放すために

入院生活を経て、万引きを手放すことができました。万引きを手放すことができたのには、3つの大きな要因があると感じています。

万引きを手放せた要因3つ

わたしが万引きを手放せた要因はいろいろあります。細かいことをあげればきりがありませんが、その中でも特に大きな要因が次の3つです。

①盗らない期間ができ、「盗らない方が楽」とわかったこと
②過去の盗ってきたことを正直に話せたこと
③内発的動機づけを得て、「やめたい!」と思えるようになったこと

盗らない生活になって、不安や怯えが減った

わたしは入院をすることで、万引きをするようになってから初めて「盗らない期間」を過ごすことができました。万引きができない状況に追い込むという半強制的な方法でしたが、それでもなんとか万引きをしない生活になりました。万引きをしなくなると、万引きに対する後ろめたさ、捕まるのではないかという不安、ばれるのではないかという怯えなど、様々な負の感情から解放されました

万引きをしている頃は、万引きでストレスを発散している部分もあったので「万引きをしている方が楽」だと思っていました。万引きをする方が得をしていると思っていました。それが、万引きをしなくなって「万引きをしないほうが楽だ」ということに気づきました

また、精神的な余裕ができたことで、自分の問題点と向き合えるようになりました。 万引きがやめられない状態はアルコール依存症でいうと酒に酔っている状態と同じ、つまり万引きをやめて酔いから覚めた”しらふ”の状態にならないといろんなことが見えてこないのだと思います。 盗ることがやめられない生活では、頭が万引きのことに支配されていて、目の前のことしか考えられない状態で、他のことを考える余裕はありませんでした。自分なりに「やめなかきゃマズい」と自助グループに通ったり、万引きで捕まるニュースを見るなど情報も取り入れようとしましたが、全然響いてなかったと思います。そして対策と言っても、盗りたい気持ちを無理やりに抑える方法、どうやってガマンするかを考える程度で、自分の問題点と向き合うことはとてもできる状態ではなかったです。

それが「空白期間ができる」ことでやっと問題点と向き合うことができたと思います。やっと、回復へのスタートラインに立てたといった感じでした。

(詳しくはこちらです → 「盗らない日々を送れるようになってよかった」)

わたしの場合、この空白期間を作るために入院が必要でした。盗れる環境でガマンするということができず、入院で半強制的に空白期間を作りました。もし入院しなくても空白期間を作れていれば、通院治療だけでも万引きを手放せたかもしれないと思うこともあります。そのくらい、空白期間を作り「盗らない方が楽」と実感することは大きな意味があると感じます。

万引きし続けていたことを初めて正直に話せた

わたしは万引きをするようになってから、毎日のように万引きをしていました。警察に捕まっても、その翌日には万引きをしてしまうような状態でした。通院と自助グループに通い始めてからも毎日万引きをするような生活でしたが、それを誰にも話しませんでした。ばれることにひやひやしながら、万引きをする生活を続けていました。

入院をするときに、「万引きをやめるために、今までのことを正直に話そう!」と決めていました。「入院は回復に向けての最終手段」、「ここでやめられなければ後がない」という認識があったので、ここで「正直に話せなければ回復できない」くらいの気持ちでいました。過去の過ちを振り返って、正直にそれを誰かに話したり、書き出したりして外に出す作業のことを「棚おろし」といいます。入院中には、徹底的に棚おろしをすることを意識しました。

入院して約1週間後、当事者のみが参加するミーティングで入院直前まで万引きがやめられなかったことを正直に話しました。そして、主治医、家族、自助グループの仲間へと順番に話していきました。
(詳しくはこちらです → 「入院中の取り組み①-正直に話す」・「入院中の取り組み②-外泊して正直に話す」)

正直に話すことで、気持ちがとても楽になりました。隠し続けることよりも、正直に話す方がずっと楽だということがわかりました。そして、正直に話して、それを受け止めてもらえたことで、わたしのことを見捨てないでいてくれるという安心感を得られたことはとても大きかったと思います。

(詳しくはこちらです → 「正直に話すことで得られたこと」)

心から「やめたい!」と思えるようになった

盗らない生活を送るうえで、とても役立っていると感じることが内発的動機づけを得られたことです。「内発的動機づけ」とは、内面に沸き起こった興味や関心、意欲などによっておこるやる気のことを言います。報酬や罰則などには関係なく、自分自身から発生するものです。

わたしは棚おろしを何度も行うことで、盗っていた頃に戻りたくないと思うようになりました。また、被害店舗への弁済をおこなったのですが、その時の経験から盗っていた頃に戻りたくないという思いをさらに強くすることができました。このような内発的動機づけを得られたことで「やめなきゃまずい」という心境から、「万引きをやめたい!」と心から思えるような状態になったと思います。

今までの万引きを正直に話し、盗らない生活を送ることで怯えや不安が減り、盗らない生活の方が楽だということがわかりました。この2つのことだけでも、盗らない生活を送れるようになっていたかなとも思います。そこに内発的動機づけが加わったことで、「また盗りたくなってしまうのではないか?」という不安が少なくなった感じがしています。

(詳しくはこちらです → 「内発的動機づけを得られると強い!」)

今後も盗らない生活を続けるために

万引きを手放せた要因になっていると感じることは他にも多くありますが、この3つが特に大きな力になっていることは間違いありません。しかし、今後もこの要因が作用し続けてくれるかどうかは別問題であり、一度万引きを手放せたからと言って、油断大敵・過信禁物です。これらの大きな要因のほかに、日常生活での小さなことの積み重ねが盗らない生活につながっていくのではないかと考えています。

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